術後患者に発症した輸血後GVHD症例のHLA型変換と血液X線照射の実態

I. 目的 ”術後紅皮症”の病因が輸血後GVHDであることが明らかにされつつある. これを証明するには, リンパ球のキメラ状態を示すか, HLA型の供血者型への変換を示す必要がある. 既に報告済の1症例に加えて, 2症例でHLA型変換を観察したので報告する. 合せて血液のX線照射によるGVHDの予防の実態についても報告する. II. 方法 HLA型検査:末梢血リンパ球をFicoll-Paqueを用いて遠心分離し, さらにTおよびB細胞はナイロンファイバーカラムで分離した. HLA抗原はリンパ球細胞毒性試験(LCT)をNIH標準法に従って実施した. 線維芽細胞のHLA抗原同定は, 細胞をインター...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 282
Main Authors 伊藤和彦, 則岡美保子, 吉田久博, 藤田真弘, 丸屋悦子, 佐治博夫, 細井武光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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ISSN0546-1448

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Summary:I. 目的 ”術後紅皮症”の病因が輸血後GVHDであることが明らかにされつつある. これを証明するには, リンパ球のキメラ状態を示すか, HLA型の供血者型への変換を示す必要がある. 既に報告済の1症例に加えて, 2症例でHLA型変換を観察したので報告する. 合せて血液のX線照射によるGVHDの予防の実態についても報告する. II. 方法 HLA型検査:末梢血リンパ球をFicoll-Paqueを用いて遠心分離し, さらにTおよびB細胞はナイロンファイバーカラムで分離した. HLA抗原はリンパ球細胞毒性試験(LCT)をNIH標準法に従って実施した. 線維芽細胞のHLA抗原同定は, 細胞をインターフェロン-α存在下で72時間培養後, 蛍光染色法で行った. 血液X線照射:採血後7~10日以内の血液に日立X線照射装置MBR-1520RBを使って, 15-50 Gy照射した. III. 成績 患者は肝葉切除術を受けた2症例(症例2と症例3)で, 手術中に院内採血新鮮血の輸血を受けた. 術後13および14日目より急性GVHDに特異的な臨床症状が出現し, 術後24日および25日目にそれぞれ死亡した. 症例2のHLA型は術後15日目はヘテロ接合体であったが, 16日以降は供血者の1人に一致したホモ接合体と推測される型を示した. 症例3は術後16日には供血者の一人に一致したホモ接合体と推測される型を示した. 血液X線照射を1989年1月から開始し, 大部分の診療科が実施している. 照射しなかった血液の輸血で上記2症例の急性GVHDが発症したが, 照射血液の輸血では発症していない. IV. 結論 HLAヘテロ接合体の患者が, ハプロタイプの一致したホモ接合体供血者から輸血を受けると拒絶できないのでGVHDが発症することが, 既報の1症例と上記の2症例の解析で証明された.
ISSN:0546-1448