身体障害者における手根管症候群の臨床的検討

身体障害者における手根管症候群症例につき臨床的検討を行い, その発生因子について考察を加え報告した. 当院にて手根管症候群の診断を受けた身体障害者13例21肢(両側例8例, 片側例5例)を対象とした. 年齢は平均45.2歳であり, 男性5例, 女性8例であった. 障害の内訳は体幹機能障害7例, 下肢機能障害6例, 上肢機能障害3例(重複あり)であり, 1級が3例, 2級が10例であった. 障害の原因疾患は脳性麻痺7例, ポリオ2例, 運動ニューロン疾患2例, その他2例であった. 初診時臨床所見として知覚障害76.2%, 筋萎縮76.2%, チネル徴候85%, フアーレン徴候70%, 夜間痛2...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 28; no. 11; p. 917
Main Authors 小川鉄男, 猪飼通夫, 河合憲一, 万歳登茂子, 間渕陽子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.11.1991
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ISSN0034-351X

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Summary:身体障害者における手根管症候群症例につき臨床的検討を行い, その発生因子について考察を加え報告した. 当院にて手根管症候群の診断を受けた身体障害者13例21肢(両側例8例, 片側例5例)を対象とした. 年齢は平均45.2歳であり, 男性5例, 女性8例であった. 障害の内訳は体幹機能障害7例, 下肢機能障害6例, 上肢機能障害3例(重複あり)であり, 1級が3例, 2級が10例であった. 障害の原因疾患は脳性麻痺7例, ポリオ2例, 運動ニューロン疾患2例, その他2例であった. 初診時臨床所見として知覚障害76.2%, 筋萎縮76.2%, チネル徴候85%, フアーレン徴候70%, 夜間痛28.6%にみられた. 屋内移動手段として車椅子使用は13例中6例であり, 両松葉杖使用2例, 歩行器使用1例, 独歩3例であった. 電気生理学的にはBuchthalらの分類で脱髄型63.2%, 軸索変性+脱髄型36.8%であった. Aljureら, Gellmannらは脊損による対麻痺, Alvaregらはアテトーゼ型脳性麻痺, Wernerらはポリオの患者に高率に手根管症候群を合併すると報告している. 歩行障害や上肢の不随意運動のある障害者では体重支持・手関節の異常運動により正中神経のentrapmentを来しやすく, 電気生理学的に早期診断を行えば, その増悪を予防できると考えられた. <質疑応答> 栢森良二(帝京大):二重挫滅による手根管症候群の治療法はどのようにしているのでしょうか. 小川鉄男:(1)まず, 障害の原疾患とは別に必ず治る疾患であることを説明する. 軸索変性を伴ったものは手術を優先する. 夜間装具で疼痛が軽減しないものも手術を行う. (2)原疾患の自然経過による歩行障害の悪化が誘因と思われる.
ISSN:0034-351X