心臓外科手術における輸血後肝炎
[目的]平成元年12月27日より日本赤十字血液センターにおいて供血者のHCV抗体スクリーニングが開始された. これを機会にHCV抗体スクリーニング導入前後における輸血後肝炎の発生状況を調査した. [対象]昭和63年1月から平成2年6月までに行われた心臓外科手術200例を調査の対象とした. [方法]HCV抗体スクリーニング導入以前の, 昭和63年1月から平成元年12月までの手術158例と, 平成2年1月から同年6月まで42例を対象とした. ただし後者において, 平成元年12月以前に輸血歴のあるものは含まれていない. それぞれ手術時の, 輸血実施単位数, 血液製剤の種類を調査した. 手術後の患者の...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 216 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.03.1991
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | [目的]平成元年12月27日より日本赤十字血液センターにおいて供血者のHCV抗体スクリーニングが開始された. これを機会にHCV抗体スクリーニング導入前後における輸血後肝炎の発生状況を調査した. [対象]昭和63年1月から平成2年6月までに行われた心臓外科手術200例を調査の対象とした. [方法]HCV抗体スクリーニング導入以前の, 昭和63年1月から平成元年12月までの手術158例と, 平成2年1月から同年6月まで42例を対象とした. ただし後者において, 平成元年12月以前に輸血歴のあるものは含まれていない. それぞれ手術時の, 輸血実施単位数, 血液製剤の種類を調査した. 手術後の患者の総ビリルビン, GOT, GPTのデータの経過を追った. 輸血後非A非B肝炎については, 肝炎研究連絡協議会の診断基準に従った. [結果]昭和63年1月から平成元年12月までの手術例については, 158例中31例(19.6%)が輸血後肝炎と診断されうち1例のみ(3.2%)HCV抗体が陽性であった. 平成2年1月から同年6月までの手術例においては, 42例中4例(9.5%)が輸血後肝炎と診断され, うち1例のみ(25.0%)がHCV抗体が陽性であった. この1例については, B型肝炎ウィルスの二重感染も疑われた. [考察]HCV抗体スクリーニング導入後では輸血後肝炎が45.6%減となり, 効果が上がっている. 輸血後肝炎と診断されている症例のうち, C型肝炎が少ないが, これはほとんどの症例が外来加療中であるため, 長期の間にわたってHCV抗体のチェックを行うことが灘しく, C型肝炎のウィルス学的診断にまで至らないことが推測された. またHCV抗体陰性の血液が輸血されているにもかかわらず, C型肝炎と診断された症例もあった. 以上のことから今後当輸血センター部において, (1)患者の輸血前と輸血後におけるHCV抗体検査を行い, 輸血後のフォローアップをする(2)可能な限り自己血のみで手術を施行できるよう体制を整え, 臨床側に提言していきたい. |
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ISSN: | 0546-1448 |