慢性骨髄性白血病骨髄移植後再発に対してドナー白血球輸注を行った1症例の経過と問題点について
【目的】HLA完全一致同胞より骨髄移植(BMT)を行った慢性骨髄性白血病(CML)患者が約6年後に再発をした. これに対し同一ドナー白血球輸注(DLT)を7回行ったが, 再発診断より200日を経ても血液学的効果が認められていない. BMT後再発CMLに対するDLT療法は, 細胞遺伝学的に再寛解へと導入する上で有効な治療法とされるが, 抄録校了時で本症例には何の変化も認められていない. この症例の経過について報告し, 問題点を考察する. 【症例】1990年6月(33才), CML第一慢性期にHLA・ABO一致弟をドナーとしてBMTを行い, GVHDもなくドナー造血が確認され退院した. 5年10ヵ...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 207 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1997
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 【目的】HLA完全一致同胞より骨髄移植(BMT)を行った慢性骨髄性白血病(CML)患者が約6年後に再発をした. これに対し同一ドナー白血球輸注(DLT)を7回行ったが, 再発診断より200日を経ても血液学的効果が認められていない. BMT後再発CMLに対するDLT療法は, 細胞遺伝学的に再寛解へと導入する上で有効な治療法とされるが, 抄録校了時で本症例には何の変化も認められていない. この症例の経過について報告し, 問題点を考察する. 【症例】1990年6月(33才), CML第一慢性期にHLA・ABO一致弟をドナーとしてBMTを行い, GVHDもなくドナー造血が確認され退院した. 5年10ヵ月後(1996年4月, 39才), 近医で偶然白血球数軽度増加(14,300/μl)が発見され, 本院を紹介された. この時の検査で好塩基球増加(6%), NAP低値(score 8, rate 6%), 末梢血Ph陽性細胞40%(FISH法)の結果より, 慢性期再発と診断した. 同一ドナーによるDLT目的で1996年6月入院, この時の骨髄細胞核型はt(9;22)が100%(20/20), しかしVNTR解析ではmixed chimeraであった. CD3細胞数5x10^6 /kgよりDLTを開始, 4週毎に2倍, 4倍と細胞数を増加した. この間, 末梢血白血球数と分画, 表面マーカー(CD2, 3, 4, 8, 10, 11b, 13, 14, 19, 25, 33, 34, 45RA, 45RO, 49d, 56, 95, HLA-DR)等を追跡したが変化がなく, 無症状のため退院. 外来で1週毎に合計4回に渡りドナーCD3細胞を総計2x10^8 /kgを輸注したが変化は得られていない. 今後は同一ドナー同種PBSCTを考慮している. 【考察】本症例とドナーとはHLA・ABO式血液型のみならず, Rh・Lewis・MNSs等の赤血球型も一致しており, 遺伝子構成が似ているためGVL効果が得られにくい可能性がある. GVHDとGVLは同一ではないとしても, BMT時にGVHDが無い症例の再発については, DLT開始CD3細胞数をもっと多くしても良かったと考えられる. 本症例はBMT後約6年を経たlate relapse症例であり, 急性転化のriskが高い可能性がある. DLTが無効である場合には, GVL誘発の工夫や再移植の可能性を速やかに考慮することが重要と思われる. |
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ISSN: | 0546-1448 |