気管・気管支断裂の2症例

気管・気管支断裂は極めて希な外傷であるが, その診断, 治療の遅れは重篤な状態を引き起こす. 今回われわれはそれらの2例を経験したので若干の考察を加え報告する. <症例1>17歳, 男性. オートバイ運転中に転倒し受傷. 某病院に搬送され右緊張性気胸の診断にて胸腔ドレナージが施行されたが改善せず, 意識障害, 低酸素血症を伴い翌日搬送された. 胸腔ドレーンを追加したが右肺は拡張せず, 分離肺換気を行いドレーンからの排気は減少したがPa_O_2 も低下した. 肺損傷による大量のエアリークと判断し緊急手術を行った. 開胸したところ右肺は完全に虚脱し酸素のフラッシュを多用しても換気は不十...

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Published in蘇生 Vol. 10; pp. 98 - 99
Main Authors 管桂一, 郡司啓文, 藤井眞行, 奥秋晟, 趙達来, 熊田芳文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1992
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ISSN0288-4348

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Summary:気管・気管支断裂は極めて希な外傷であるが, その診断, 治療の遅れは重篤な状態を引き起こす. 今回われわれはそれらの2例を経験したので若干の考察を加え報告する. <症例1>17歳, 男性. オートバイ運転中に転倒し受傷. 某病院に搬送され右緊張性気胸の診断にて胸腔ドレナージが施行されたが改善せず, 意識障害, 低酸素血症を伴い翌日搬送された. 胸腔ドレーンを追加したが右肺は拡張せず, 分離肺換気を行いドレーンからの排気は減少したがPa_O_2 も低下した. 肺損傷による大量のエアリークと判断し緊急手術を行った. 開胸したところ右肺は完全に虚脱し酸素のフラッシュを多用しても換気は不十分だった. 右主気管支の断裂が判明したので左への片肺挿管としたところ換気は可能となり断裂部の端端吻合を行い, 術後はスムーズに経過した. <症例2>16歳, 男性. オートバイ運転中に転倒し搬送された. 血圧は測定できず, 意識障害, チアノーゼ, 頸部と胸部に擦過傷と皮下気腫を認めた. 挿管後血圧とチアノーゼは改善し, 気胸に対し胸腔ドレナージを行ったが次第に換気が不能となり皮下気腫も増強し除脈も出現した. 緊急に気管支ファイバースコピーを行ったところ, チューブ先端は軟部組織によりほとんど閉塞していた. 直ちに気管切開をすると気管断裂が判明し, 断端部よりチューブを挿入し状態は改善した. 引き続き断端部の修復術を行い, 術後はスムーズに経過した. <考案および結語>外傷後に呼吸困難, 血痰などの他, 頸部, 胸部の皮下気腫や気胸を認め胸腔ドレナージ後も改善しない場合, また深頸部や縦隔気腫が存在したら, 気管・気管支断裂を疑う必要がある. これらの所見があれば緊急気管支ファイバースコピーを行い確実に気道を確保し, 早期の診断と外科的処置が必要である.
ISSN:0288-4348