下顎枝矢状分割ネジ止め固定術における下顎頭長軸角の変化と術後の顎関節症状について

顎変形症の外科的療法としての下顎枝矢状分割ネジ止め固定術は, 現在, 広く行われており, 良好な成績が報告されている. しかし, 分割した骨片を強固に固定した際には関節頭が偏位し, 術後に顎関節症状の出現が懸念されている. そこでわれわれは顎変形症患者で両側下顎枝矢状分割ネジ止め固定術を行い, 骨片を強固に固定した症例について術前後の下顎頭長軸角の変化をX線写真により計測し, 顎関節症状との関連について検討したので報告した. 対象:1992年2月から1997年9月までの5年7ヵ月間に, 当科において下顎枝矢状分割術を施行し原則として3本のチタン製ネジにて骨片同士を固定した顎変形症症例10例とし...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 8; no. 2; pp. 107 - 108
Main Authors 神野恵治, 笹岡邦典, 茂木健司, 中曾根良樹, 大竹克也, 今井正之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 15.08.1998
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ISSN0916-7048

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Summary:顎変形症の外科的療法としての下顎枝矢状分割ネジ止め固定術は, 現在, 広く行われており, 良好な成績が報告されている. しかし, 分割した骨片を強固に固定した際には関節頭が偏位し, 術後に顎関節症状の出現が懸念されている. そこでわれわれは顎変形症患者で両側下顎枝矢状分割ネジ止め固定術を行い, 骨片を強固に固定した症例について術前後の下顎頭長軸角の変化をX線写真により計測し, 顎関節症状との関連について検討したので報告した. 対象:1992年2月から1997年9月までの5年7ヵ月間に, 当科において下顎枝矢状分割術を施行し原則として3本のチタン製ネジにて骨片同士を固定した顎変形症症例10例とした. 方法:術前後のX線CT写真を用いて下顎頭長軸角の変化を検討した. なお, 下顎頭長軸角は, 下顎頭長軸の延長線が, 外後頭隆起最突出点と頸椎最前点とを結んだ線と直交する線とのなす角とした. 顎関節症状は臨床的診査により評価した. 結果:10例全例について下顎を後退させた. そのうち下顎骨大骨片を左右にシフトさせた症例は3例であった. 下顎頭長軸角は10例全例で, 一定の傾向ではないが術前後で変化がみられ, 軽度ではあるが経過とともに術前状態に近づく傾向にあったが, 下顎骨の後戻りとの関連はみられなかった. 術後, 軽度の顎関節症状が, 6例に出現したが, 一過性で, 他の一例にのみ雑音が存続している. 一例では術前の雑音が術後消失し, これらの結果から本法は顎関節に悪影響を及ぼさないと考える.
ISSN:0916-7048