スナネズミ線条体における一酸化窒素産生の虚血時間による違い

脳では虚血再灌流により一酸化窒素(NO)の産生が変化するといわれている. しかし, その時間経過や関与するNO合成酵素の種類は明らかではない. また, NO産生と神経細胞障害との関連も示唆されているので, 本研究ではマイクロダイアリシス法でNOの代謝物であるNOxを定量して, スナネズミ線条体におけるNO産生を検討した. ハロタン麻酔で, 両側総頸動脈に絹糸をかけて一過性前脳虚血の準備をした. ハロタン麻酔のまま脳定位固定装置に固定し, マイクロダイアリシスプローブを左線条体に挿入した. リンゲル液を2μL/分で還流し, 脳の温度を常温に保ち, 糸に重りを吊して一過性前脳虚血を負荷した. 回収...

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 214
Main Authors 足立尚登, 多保悦夫, 天川和彦, 新井達潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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Summary:脳では虚血再灌流により一酸化窒素(NO)の産生が変化するといわれている. しかし, その時間経過や関与するNO合成酵素の種類は明らかではない. また, NO産生と神経細胞障害との関連も示唆されているので, 本研究ではマイクロダイアリシス法でNOの代謝物であるNOxを定量して, スナネズミ線条体におけるNO産生を検討した. ハロタン麻酔で, 両側総頸動脈に絹糸をかけて一過性前脳虚血の準備をした. ハロタン麻酔のまま脳定位固定装置に固定し, マイクロダイアリシスプローブを左線条体に挿入した. リンゲル液を2μL/分で還流し, 脳の温度を常温に保ち, 糸に重りを吊して一過性前脳虚血を負荷した. 回収液中のNOxをジアミノナフタレン(DAN)法で定量した. さらに非特異的NO合成阻害薬のニトロアルギニンメチルエステル(L-NAME, 60mg/kg)と, 神経性NO合成阻害薬であるニトロインダゾール(7-NI, 80mg/kg)のNO産生に及ぼす効果を検討した. 回収率から求めた非虚血時の線条体細胞外液中のNOx濃度は, 0.33±0.10μM(平均±SD, n=35)であった. 虚血によりNO産生は虚血時間に関係なく低下した. 再還流後のNO産生は2分間虚血の場合は一過性に亢進し再び元のレベルに戻った. 5分, 10分間虚血では持続的にNO産生が増加した. 20分間虚血の場合には再還流後のNO産生に有意な増加はなかった. L-NAMEも7-NIも非虚血時のNOxレベルを約50%に減少させた. また, どちらの阻害薬も5分間虚血による再還流後のNO産生増加を抑制した. 10分間虚血による再還流後のNO産生増加に対して, L-NAMEは抑制したが, 7-NIは完全には抑制しなかった. 15分間虚血の場合はL-NAMEはNO産生増加を抑制したが7-NIは全く影響を及ぼさなかった. 以上の結果から, スナネズミ線条体における非虚血時のNO産生には, 神経性NO合成酵素の関与が大きいと考えられる. また, 虚血時間が5分程度の場合は, NO産生に神経性NO合成酵素が関与するが, 虚血時間が長くなると, NO産生には他のNO合成酵素の影響が考えられる.
ISSN:0288-4348