ネフローゼ症候群による両側大腿切断者のリハビリテーション経験
【目的】ネフローゼ症候群に伴う大腿動脈血栓症から両側大腿近位切断を受けた症例のリハビリテーションを経験した. 原疾患の再燃をおそれて安静をとりたがる患者に慎重に訓練を開始し, 徐々に質・量を増す方法でコントロールしながら本人の積極性も引き出せ, 車椅子生活で主婦業に復帰させることができたので, 報告する. 【症例】8年前発症, 緩解増悪を繰り返していたネフローゼ症候群の37歳女性. 1990年12月末, 両側大腿動脈血栓症のため両下肢大腿基部切断手術を受ける. 翌5月, 車椅子生活の訓練治療を希望し入院. 著明な満月様顔貌と肥満(体重47 kg), 筋緊張低下, 両上肢の筋力軽度低下(廃用性)...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 29; no. 12; p. 1157 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
01.12.1992
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 【目的】ネフローゼ症候群に伴う大腿動脈血栓症から両側大腿近位切断を受けた症例のリハビリテーションを経験した. 原疾患の再燃をおそれて安静をとりたがる患者に慎重に訓練を開始し, 徐々に質・量を増す方法でコントロールしながら本人の積極性も引き出せ, 車椅子生活で主婦業に復帰させることができたので, 報告する. 【症例】8年前発症, 緩解増悪を繰り返していたネフローゼ症候群の37歳女性. 1990年12月末, 両側大腿動脈血栓症のため両下肢大腿基部切断手術を受ける. 翌5月, 車椅子生活の訓練治療を希望し入院. 著明な満月様顔貌と肥満(体重47 kg), 筋緊張低下, 両上肢の筋力軽度低下(廃用性)を認める. ネフローゼ症候群にステロイド糖尿を合併しており, 1日尿蛋白と尿糖, 本人の疲労感を指標としてコントロールしながら訓練開始した. 【結果】食事, トイレのみ車椅子移動から始め, 徐々にベッド上から車椅子生活に切り換え, 1カ月後には1日中車椅子で過ごせるようになった. 7月末一般家事動作, 平行棒内移動も可能となり退院した. 運動量が増すにしたがい, 尿蛋白の増加することなく, 尿糖は減少, insulinの必要量も減少した. Ccrも改善した. 10月には家屋改造が完了し, 完全に主婦業に復帰した. 【結論】ネフローゼ患者の生活指導は一般に運動制限をすることが多く, 肥満や体力低下, 心理面での悪影響などが指摘されている. 本症例で運動量の増加に伴い原疾患も改善, 本人の積極性も引き出せた点は, 特記すべきことと思われる. <質疑応答> 三上真弘(帝京大):ネフローゼ症候群の患者では運動量が問題のようですので, 上肢だけによる車椅子トランスファーより, 義足装着でトランスファーを行った方が運動負荷量は減じると思われますが, その点については考えなかったのですか. 佐々木健(共同演者):移動移乗のために義肢装着をする方が効率がよいと思われますが, 今回のネフローゼ症候群にはそうすることでどのような結果になるのかは行えませんでした. 山崎正子:平行棒内移動は義肢装着を前提に始めましたが, 家族(夫)からのクレーム, 本人の気持の動揺もあり, 義肢装着し訓練するところまではいきませんでした. しかし, 筋力増強の意味で, 移動訓練そのものは続けることができました. |
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ISSN: | 0034-351X |