輸血とウエストナイルウイルス
ウエストナイルウイルスは1937年ウガンダにおいて熱発患者から初めて分離されたウイルスである. 日本脳炎ウイルス, デングウイルス等とともに, フラビウイルス科, フラビウイルス属に分類されるウイルスであり, 自然界では鳥と蚊の間で維持されている. ヒトの感染は, 感染蚊の吸血によって起こる. しかし, 通常は感染したヒトを非感染蚊が吸血したとしても, 蚊の感染は起こらない. ウエストナイルウイルス感染症は過去アフリカ, ヨーロッパ, 西アジアにおける流行が報告されていたが, アメリカ大陸においては, 1999年アメリカ合衆国のニューヨーク市周辺で初めて患者発生があった. その後, 年毎に侵淫...
Saved in:
Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 222 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
Cover
Summary: | ウエストナイルウイルスは1937年ウガンダにおいて熱発患者から初めて分離されたウイルスである. 日本脳炎ウイルス, デングウイルス等とともに, フラビウイルス科, フラビウイルス属に分類されるウイルスであり, 自然界では鳥と蚊の間で維持されている. ヒトの感染は, 感染蚊の吸血によって起こる. しかし, 通常は感染したヒトを非感染蚊が吸血したとしても, 蚊の感染は起こらない. ウエストナイルウイルス感染症は過去アフリカ, ヨーロッパ, 西アジアにおける流行が報告されていたが, アメリカ大陸においては, 1999年アメリカ合衆国のニューヨーク市周辺で初めて患者発生があった. その後, 年毎に侵淫地域は拡大し, 2003年1月現在, 約4000人の患者と250人を超す死亡者が報告されている. フラビウイルス間には免疫学的に交叉反応が存在するため, ウエストナイルウイルスが他のフラビウイルス侵淫地域に侵入した場合には血清診断において注意が必要となる. ウエストナイルウイルスに対するワクチンは実用化されていない. 一方, 日本脳炎ワクチンのウエストナイルウイルス感染に対する効果としても種々の検討がなされており, 動物実験における防御効果の報告がある. しかし, ヒトにおける防御効果においては全く検討されていないことから, 現状では日本脳炎ワクチンはヒトにおいてもウエストナイルに対して有効であると判断されるべきではないと考えられる. ウエストナイルウイルスは通常人が感染源となこるとはないが, 米国においては, 輸血, 臓器移植および母乳を介しての感染と考えられる例も報告されている. 今後, 仮にウエストナイルウイルスが日本に侵入した場合には, 輸血によるウエストナイルウイルス感染も考慮に入れた対策が必要となろう. |
---|---|
ISSN: | 0546-1448 |