顆粒球抗原抗体に関する研究:小児期好中球減少症における抗好中球抗体の検討

【目的】小児期の好中球減少症には種々の病因によるものが報告されているが, 乳児の好中球減少症での抗好中球抗体が検出される免疫性好中球減少症はかなりの頻度で認められつつある. 今回我々は小児期好中球減少症約40例について, 血清中の抗好中球抗体を顆粒球間接免疫蛍光法と顆粒球凝集反応にて検索を行なったので報告する . 【方法】顆粒球間接免疫蛍光法(GIIFT)はparaform-aldehyde処理好中球と反応後, 種々のFITC標識抗ヒトガンマグロブリン抗体と反応させ, flow cytometryにて判定した. 微量顆粒球凝集反応(M-LAT)はTerasaki plateを用いてEDTA依存...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 370
Main Authors 金田みゆき, 小林正夫, 駒澤克孝, 鈴木久美, 松近尚子, 谷広ミサエ, 岡田浩佑, 上田一博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】小児期の好中球減少症には種々の病因によるものが報告されているが, 乳児の好中球減少症での抗好中球抗体が検出される免疫性好中球減少症はかなりの頻度で認められつつある. 今回我々は小児期好中球減少症約40例について, 血清中の抗好中球抗体を顆粒球間接免疫蛍光法と顆粒球凝集反応にて検索を行なったので報告する . 【方法】顆粒球間接免疫蛍光法(GIIFT)はparaform-aldehyde処理好中球と反応後, 種々のFITC標識抗ヒトガンマグロブリン抗体と反応させ, flow cytometryにて判定した. 微量顆粒球凝集反応(M-LAT)はTerasaki plateを用いてEDTA依存性の凝集を倒立位相差顕微鏡にて検索した. 好中球特異性の検討の目的で, 一部の症例ではLCT, PIIFTとパネル好中球での吸収試験を併用した. 【結果】検討症例の内訳は慢性良性型30例, 先天性好中球減少症2例, 同種免疫性1例, 薬剤性1例, その他5例であった. 年齢は3か月から16歳で, 診断時の末梢血好中球絶対数は0~544/μlであった. 好中球減少以外の他の血液学的異常所見は認められなかった. 慢性良性型30例中ではGIIFT, M-LATとも陽性例が12例GIIFTのみが陽性が10例, 双方とも陰性が8例であった. GIIFT, M-LATともに陽性例のうち5例で好中球特異抗原の一つであるNA1に対する自己抗体と同定された. 骨髄穿刺の施行された症例では, ほとんどで成熟好中球の減少が認められた. 先天性好中球減少症2例では抗好中球抗体は陰性であった. 経過観察が可能であった慢性良性型では14か月から24か月で好中球数は正常化し, 同時に抗好中球抗体も自然消失した. 【結語】小児慢性良性好中球減少にはかなりの頻度で自己抗体の検出される自己免疫性好中球減少症が存在すると思われた. 本疾患における抗好中球抗体の検索は不可欠であり, 自然軽快がほとんどであることより十分な経過観察が必要と考えられた.
ISSN:0546-1448