救急搬送され集学的治療を行った小児顔面外傷の1例

思春期は生涯のうちで身体的, 精神的に最も変化の激しい時期であり, ストレスや不安があると自己で処理しきれず, 思いがけない形で発散され, 時に自己破壊的行動が出現する. 今回われわれは自殺企図により当院救命救急部に搬送され, 他科との集学的治療を行った顔面外傷の1例を経験したので報告した. 患者:14歳女性 初診:平成10年9月8日 搬送理由:陸橋から飛び降り, 119番通報で当院救命救急センターに搬された. 自殺企図理由:交友関係のもつれ, 塾の教師による性的いたずら及び失恋など複数の原因が考えられる. 外傷程度:オトガイ部皮膚裂創, 右側上顎骨骨折, 下顎正中部粉砕骨折54321|1破折...

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Published in小児口腔外科 Vol. 10; no. 1; p. 60
Main Authors 続雅子, 上野弘貴, 高橋義明, 鈴木愛, 名取淳一, 千葉博茂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 30.06.2000
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ISSN0917-5261

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Summary:思春期は生涯のうちで身体的, 精神的に最も変化の激しい時期であり, ストレスや不安があると自己で処理しきれず, 思いがけない形で発散され, 時に自己破壊的行動が出現する. 今回われわれは自殺企図により当院救命救急部に搬送され, 他科との集学的治療を行った顔面外傷の1例を経験したので報告した. 患者:14歳女性 初診:平成10年9月8日 搬送理由:陸橋から飛び降り, 119番通報で当院救命救急センターに搬された. 自殺企図理由:交友関係のもつれ, 塾の教師による性的いたずら及び失恋など複数の原因が考えられる. 外傷程度:オトガイ部皮膚裂創, 右側上顎骨骨折, 下顎正中部粉砕骨折54321|1破折, 左側外側襖状骨骨折, 右側第5中足骨骨折. 当院到着時の意識状態は鮮明であり, まずオトガイ部皮膚裂創の縫合と54321|1抜歯術が施された. 骨折部の疼痛を訴えていたため, 救急救命病棟に緊急入院後で当科, 整形外科ならびに精神科との共同治療を開始し, 全身精査のうえ9月16日全身麻酔下に観血的骨折整復固定術を施行した. 術後は当科へ転科し, 創部の治癒を待って精神科へ転科し退院となった. 退院後は日常生活への復帰が可能となり, 本人の承諾が得られた本年7月29日に全身麻酔下に抜釘術, オトガイ部皮膚瘢痕形成術を行った. 思春期における顎骨骨折の治療法は顎発育の面からも種々議論されているが, 各専門分野における集学的治療の重要性を再確認するとともに, 特に受傷原因の背景も考慮した治療が必要であると確信した.
ISSN:0917-5261