腎,副腎,尿管,後腹膜腫瘍に対する手術

腎, 副腎, 尿管, 後腹膜における術式で, 周術期輸血を考慮するのは, 1. 腎癌に対する根治的腎摘除術および腎部分切除術, 2. 腎孟, 尿管腫瘍に対する腎尿管全摘除術, 3. 褐色細胞腫の手術, 4. 後腹膜腫瘍および後腹膜リンパ節廓清術(精巣腫瘍化学療法後), である. 最近, 当教室および関連施設では, 上記1, 2および3の術式変遷(開放手術から鏡視下手術へ)があったことから, 循環血液量の20%以上の出血を基準に, 術式別に周術期輸血の必要性について検討した. まず各手術において, 多臓器合併切除や不要な操作による術中出血を来した症例は検討から除外した. 1997~2001年まで...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 205
Main Authors 山田陽司, 藤本直浩, 佐藤英樹, 高橋康一, 松本哲朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.2003
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ISSN0546-1448

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Summary:腎, 副腎, 尿管, 後腹膜における術式で, 周術期輸血を考慮するのは, 1. 腎癌に対する根治的腎摘除術および腎部分切除術, 2. 腎孟, 尿管腫瘍に対する腎尿管全摘除術, 3. 褐色細胞腫の手術, 4. 後腹膜腫瘍および後腹膜リンパ節廓清術(精巣腫瘍化学療法後), である. 最近, 当教室および関連施設では, 上記1, 2および3の術式変遷(開放手術から鏡視下手術へ)があったことから, 循環血液量の20%以上の出血を基準に, 術式別に周術期輸血の必要性について検討した. まず各手術において, 多臓器合併切除や不要な操作による術中出血を来した症例は検討から除外した. 1997~2001年までに, 腎癌83例の根治的腎摘除術を, 15例の腎部分切除術を経験した. 前期では全例開放手術を施行し, 後期では限局癌に対してLap Diskを用いた腹腔鏡補助下手術または腎部分切除術を, 進行癌症例では開放手術を施行した. 出血量は, 開放手術で平均439ml, 鏡視下手術158mlと, 鏡視下手術で出血量が少なかった. 輸血を要したのは, 開放手術の進行癌症例と, 腎静脈内腫瘍塞栓を有する症例であった. またマイクロ波を使用した腎部分切除術を15例に行ったが, 導入初期の2症例を除くと, 輸血を要した症例はない. 腎尿管全摘術30例の開放手術と鏡視下手術6例では, 鏡視下手術の出血量が少ない. また褐色細胞腫では, 最近10年間では, 術前循環赤血球量が減少していた1例を除いて, 全例輸血の必要性はなかった. 術式別では, 鏡視下手術では, 開放手術よりも出血が少なかった, 化学療法後の癒着が高度で手術難易度が高い後腹膜リンパ節郭清術や, 巨大な後腹膜腫瘍では, 輸血の準備は必要である. これらのことから, 副腎, 腎. 尿管, 後腹膜腫瘍の周術期輸血ついては, 鏡視下手術が施行可能な早期または限局癌では準備不要で, 進行癌や巨大な腫瘍, 化学療法後の際に, 準備が必要と考えられる. 進行癌における自己血貯血については長期予後を含んだ検討が必要であろう.
ISSN:0546-1448