HIT抗体陰性化後に体外循環を行った1症例

【目的】ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を伴う僧帽弁置換術(MVR)において, HIT抗体陰性化後に抗凝固剤としてヘパリンを使用した体外循環(CPB)を経験したので報告する. 【対象】62歳, 男性. 急性心筋梗塞の診断にて当院に搬送され, PCIを施行した. 経過は良好であったが, 乳頭筋機能不全による僧帽弁閉鎖不全を発症し, MVRを行うことになった. PCI後, 急性腎不全にて, CHDF, HDを施行した. 経過中に血小板減少(4.9万)を認め, 検査の結果HIT抗体陽性であった. その為, MVRはHIT抗体陰性化を待ってから手術を行った. 【方法】回路は泉工医科工業社製ヘパリン...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in体外循環技術 Vol. 35; no. 2; pp. 185 - 186
Main Authors 飛田瑞穂, 荒井洋次郎, 富田元沖, 長谷川耕美, 松下勝博, 崎尾秀彰, 望月吉彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.06.2008
Online AccessGet full text
ISSN0912-2664

Cover

More Information
Summary:【目的】ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を伴う僧帽弁置換術(MVR)において, HIT抗体陰性化後に抗凝固剤としてヘパリンを使用した体外循環(CPB)を経験したので報告する. 【対象】62歳, 男性. 急性心筋梗塞の診断にて当院に搬送され, PCIを施行した. 経過は良好であったが, 乳頭筋機能不全による僧帽弁閉鎖不全を発症し, MVRを行うことになった. PCI後, 急性腎不全にて, CHDF, HDを施行した. 経過中に血小板減少(4.9万)を認め, 検査の結果HIT抗体陽性であった. その為, MVRはHIT抗体陰性化を待ってから手術を行った. 【方法】回路は泉工医科工業社製ヘパリンコーティング回路, 人工肺およびリザーバはノンヘパリンコーティングのメラHPエクセランプライム, メラHPリザーバを使用した. CPB開始前にヘパリン18,000単位を投与し, ACTが400秒を超えたことを確認後, CPBを開始した. CPB中は30分おきにACTを測定し, ACTが400秒以上となるようにヘパリンを投与した. CPB終了後, プロタミンを投与し, ACTは156秒まで回復した. CPB終了後はヘパリンを使用しなかった. 【結果】手術時間315分. CPB時間154分. 大動脈遮断時間88分. 術中出血964mL. CPB中のACTは527±65秒で推移した. CPB終了後, 回路, リザーバおよび人工肺には血栓を認めなかった. 【考察】HITを合併する患者に抗凝固剤として, アルガトロバンを使用しCPBを行った報告はある. しかし, CPBにおけるアルガトロバンの至適投与量は確立されていないため, 血栓形成の危険性があると思われる. また, アルガトロバンの拮抗薬がないため, ACTの回復までに時間がかかり, 止血が問題となる. 本症例では待機的に手術を行うことができたため, HIT抗体陰性化後にヘパリンを使用してCPBを施行し, 合併症を起こさず退院することができた. 【結論】HITを伴うMVRにおいて, HIT抗体陰性化後に抗凝固剤にヘパリンを使用して, 安全にCPBを施行できた.
ISSN:0912-2664