抗D+抗CによるRh不適合妊娠の一症例

抗D抗体と抗C抗体によるRh不適合妊娠において, 児赤血球が抗D抗体によってマスクされRh(D)血液型誤判の症例を経験したので報告する. 症例 29歳, 主婦, 妊娠歴は, 1経任・0経産人工中絶歴1あり他に既往歴はない. 前回中絶術後抗Dヒトγグロブリンを使用したが母体感作が成立し, 今妊娠後抗D抗体価が上昇し, 妊娠20W時(平成2年6月16日)Rh不適合妊娠の疑いで他院より紹介された. 6月18日の抗D抗体価は128倍あった. 8月21日と9月3日に羊水穿刺を施行後, 9月21日には抗D抗体価1024倍また, 新たに抗C抗体がブロメリン法で検出された. 10月2日2582gの男児を出産,...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 346
Main Authors 八木和世, 小本美奈, 工藤波留美, 風間あきみ, 粟野文剛, 冨永誠一, 西田陽, 石原昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:抗D抗体と抗C抗体によるRh不適合妊娠において, 児赤血球が抗D抗体によってマスクされRh(D)血液型誤判の症例を経験したので報告する. 症例 29歳, 主婦, 妊娠歴は, 1経任・0経産人工中絶歴1あり他に既往歴はない. 前回中絶術後抗Dヒトγグロブリンを使用したが母体感作が成立し, 今妊娠後抗D抗体価が上昇し, 妊娠20W時(平成2年6月16日)Rh不適合妊娠の疑いで他院より紹介された. 6月18日の抗D抗体価は128倍あった. 8月21日と9月3日に羊水穿刺を施行後, 9月21日には抗D抗体価1024倍また, 新たに抗C抗体がブロメリン法で検出された. 10月2日2582gの男児を出産, アプガールスコアーは8/8点(皮膚色-2点)であった. 児の血液型検査では他センターにてRhD(-)と判定され, 精査を当センターに依頼された. 患児は直接クームス(+)ガンマークイーンにて解離後の血液型はCcDEe型であった. また, オーソDT解離後の解離液からは, 抗D抗体と抗C抗体が検出された. 解離液のIgGサブクラスはIgG1. 2. 4とも(2+)~(3+). IgG3は(-)であった. 10月1日の母親の抗D抗体価は2ME処理血清, 未処理血清とも2048倍あった. 患児のビリルビン値はさほど上昇しなかったため交換輸血は行わず貧血による輸血を若干施行して退院した. まとめ 抗D抗体によってマスクされた血液型検査は難しい. 誤判定は, 緊急検査のため早く結果が必要であった事, 今回使用したモノクローナル抗D血清の使用法に不慣れなことが原因と思われる. また, マスクされる程多量の抗体を感作された患児が交換輸血の必要がなかったのは, 抗体のIgGサブクラスに起因するのではないかと思われる.
ISSN:0546-1448