最近の医療用レーザにおける安全性

重大な事故が発生するまで, 安全はおざなりにされる傾向がある. レーザ医学の分野も例外ではない. 最近, 皮膚疾患の治療, PDTの励起光源, 眼のPRK, 結石破砕等多くの分野でパルス波レーザの応用が増加している. パルス波レーザ光は注意を怠ると重篤な事故につながり易い. ここでは, 医療用パルス波レーザにおける安全性について述べる. [パルス幅と障害閾値]レーザ光はパルス幅が短くなるに従い, 眼障害の発生閾値は低くなり, 危険性は大きくなる. また, 短いパルス光に対し, 生体に備わっている防御機構は無力となる. 例えば, 強い光が眼に入射した際, 嫌悪反射により閉眼に至るまで約0.25秒...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 20; no. 3; p. 260
Main Author 西坂剛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本レーザー医学会 28.09.1999
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Summary:重大な事故が発生するまで, 安全はおざなりにされる傾向がある. レーザ医学の分野も例外ではない. 最近, 皮膚疾患の治療, PDTの励起光源, 眼のPRK, 結石破砕等多くの分野でパルス波レーザの応用が増加している. パルス波レーザ光は注意を怠ると重篤な事故につながり易い. ここでは, 医療用パルス波レーザにおける安全性について述べる. [パルス幅と障害閾値]レーザ光はパルス幅が短くなるに従い, 眼障害の発生閾値は低くなり, 危険性は大きくなる. また, 短いパルス光に対し, 生体に備わっている防御機構は無力となる. 例えば, 強い光が眼に入射した際, 嫌悪反射により閉眼に至るまで約0.25秒を必要とする. このため, これよりも短いパルス光の誤照射に対し, 裸眼のみでは防御できない. この数値は, JISにおけるレーザの安全性の規定でも定められている. ミリ秒位までのレーザ光は線形の, それより短いナノ, フェムト秒のパルス光になると非線形の吸収が発生し, 眼の障害は大きくなる. [紫外線レーザの普及]南極上空のオゾン層の破壊が皮膚ガンの発生を増加させていると言う. Excimerレーザは強力な紫外源であり, この散乱光の暴露は新たな障害発生になりうる. 火傷あるいはSunburnのように早期に認識できるものに注意は払われやすいが, 細胞やDNAレベルの障害は発生するまでに時間がかかり, 見過ごされがちである. [おわりに]前述したように安全に対しては, 管理者を除き一般に関心が薄い. 現在まで我が国で報告されている眼の事故例は30例を越え, 事故の大部分がパルスレーザによるものである. 最近のレーザ装置は有用性, 性能が向上した分, 危険性も増していると言える. 事故は起きてしまってからでは遅いことを心して, レーザ装置を使いたいものである.
ISSN:0288-6200