抗カルジオリピン抗体の検出とその臨床的意義
〔目的〕抗リン脂質抗体症候群(APS)は血栓症, 臓器梗塞, 反復流産, 血小板減少など様々な臨床症状を示し, 抗カルジオリピン抗体(aCL抗体)との関連が示唆されている. 現在APSにおいて検出されるaCL抗体は, カルジオリピンとこれに結合した血清中のコファクター(β2-GPI)の複合体を認識すると言われている. 今回, 我々はHarrisらの酵素免疫測定法(A法), MESACUPカルジオリピンテスト(B法;MBL社), ヒト精製β2-GPIを用いた抗CLβ2-GPIキット「ヤマサ」EIA(C法;ヤマサ醤油株式会社)の3法を用いてaCL抗体の測定及び疾患との比較検討を行った. 〔方法〕自...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 1041 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.12.1994
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 〔目的〕抗リン脂質抗体症候群(APS)は血栓症, 臓器梗塞, 反復流産, 血小板減少など様々な臨床症状を示し, 抗カルジオリピン抗体(aCL抗体)との関連が示唆されている. 現在APSにおいて検出されるaCL抗体は, カルジオリピンとこれに結合した血清中のコファクター(β2-GPI)の複合体を認識すると言われている. 今回, 我々はHarrisらの酵素免疫測定法(A法), MESACUPカルジオリピンテスト(B法;MBL社), ヒト精製β2-GPIを用いた抗CLβ2-GPIキット「ヤマサ」EIA(C法;ヤマサ醤油株式会社)の3法を用いてaCL抗体の測定及び疾患との比較検討を行った. 〔方法〕自己免疫疾患患者など119例を対象とした. A法は50μg/mlのカルジオリピン溶液をマイクロプレートに分注し, Overnight後10%FCSでblcckingした. その後, 血清を加え, アルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgG抗体を添加後, 基質を加え吸光度の測定を行った. 二種のキットに関しては添付書に従って行った. 〔結果〕119例の各方法のaCL抗体の陽性率は, A法が43.7%(52例), B法が41.2%(49例), C法はβ2-GPI添加群21.0%(25例), 非添加群37.8%(45例)を示した. これら三法を比較した場合, A法とB法は68.9%, B法とC法は76.5%, A法とC法は68.9%の一致率であった. また, 二法ずつ陽性例を分析した結果, A法とB法がともに陽性を示すものは69例中32例あり, AとC法, BとC法においてC法のみ陽性を示すものはともに数例であった. 臨床所見と比較してみると, aCL抗体が陽性を示したものは陰性のものに比べ部分トロンボプラスチン時間の延長, 血栓症の既往などと有意差がみられた. 〔まとめ〕aCL抗体の検出においてA法とB法は広範囲で陽性を示し, C法の陽性例をほぼ検出でき定性的に使用可能である. またC法の陽性例はAPSにおける臨床所見と高い相関がみられた. しかしながら, C法が陰性で他の二法が陽性を示した中にAPSの臨床症状を呈するものがあり, β2-GPI以外のコファクターの存在が示唆されaCL抗体の多様性が考えられた. |
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ISSN: | 0546-1448 |