自己血成分採血用血液成分採取装置Haemonetics multiの問題点

自己血貯血は術前貯血期間の制約から量的な制限が生じてくる. しかし, 術中出血の補充はHtが25%程度と低い血液で対応可能である. したがって, 血漿を多めに採取する事ができれば量の問題は容易に解決される. 現在, 片腕式で短時間に成分採血が可能な機種として唯一のものであるHaemonetics multiを検討する機会を得たのでその結果を報告する. 【対象と方法】 平成9年7月から平成10年12月まで九州大学医学部附属病院にて自己血採取のため, 輸血部で貯血を行った患者のべ40名について(男32人, 女8人)Haemonetics multiにより1回に600mlの自己血貯血を行ったのでその...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 271
Main Authors 稲葉頌一, 野村明彦, 徳永康信, 杉尾康浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1999
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Summary:自己血貯血は術前貯血期間の制約から量的な制限が生じてくる. しかし, 術中出血の補充はHtが25%程度と低い血液で対応可能である. したがって, 血漿を多めに採取する事ができれば量の問題は容易に解決される. 現在, 片腕式で短時間に成分採血が可能な機種として唯一のものであるHaemonetics multiを検討する機会を得たのでその結果を報告する. 【対象と方法】 平成9年7月から平成10年12月まで九州大学医学部附属病院にて自己血採取のため, 輸血部で貯血を行った患者のべ40名について(男32人, 女8人)Haemonetics multiにより1回に600mlの自己血貯血を行ったのでその結果を報告する. 【結果】 電源を入れて約3分間, 自己点検のため回路がセットできなかった. 回路装着はディスポ回路が大変複雑でバッグの位置, チューブのひねり具合など細かいコツを必要とした. 採血操作開始までに多くのデータ入力が必要で煩雑であった. さらに, いったん開始させると, わずかな手順ミスで使用不能になり, 回路装着のやり直しを余儀なくされた. 体外脱血量は125ml小児用ボールを使用することによって, 300ml以内に抑えることができた. 3サイクルの処理で赤血球はMAP添加後280ml, Htは55%で, 血漿は370mlが採取された. したがって, 合計650mlのHtは24%であった. 操作時間は穿刺から抜針まで40分であった. 【考察】 Haemonetics multiを用いた自己血成分採取は技術的には十分可能であった. しかし, FDAの安全性基準を満たす必要のためと思われるが, 過去の自由度の高いHaemoneticsの有利性が失われていた. 回路装着に10分以上必要で, 専任のナースあるいは臨床工学技士の介助が必須であった. 保険では200ml貯血で950点が認められており, 600ml貯血では十分ディスポ回路のコストをカバーできる. そうはいっても, 1名の医師が全ての作業を行わなければならない現状では大幅な簡素化・省力化が必要と考えられた.
ISSN:0546-1448