坐骨神経損傷例の機能評価
坐骨神経損傷の神経学的所見と運動歩行機能との関連について検討を加え報告した. 症例1は, 34歳女性, 腫瘍手術の際の坐骨神経切断例. 術後6カ月後, 短下肢装具, 両松葉杖使用で10分以上の歩行が可能となった. 表在知覚は足関節以下で脱失し, 位置覚は膝下から喪失していた. その後, 訓練により杖なし歩行が可能となった. 症例2は, 22歳女性, 坐骨神経不全損傷例, 受傷直後は完全麻痺を呈したが, 4カ月の経過で足関節背屈・底屈筋ともF程度まで回復した. 足関節以下の知覚脱失が残存し, 位置覚は足関節より遠位で喪失していた. 杖なし歩行が可能となったが, 平坦路以外では歩行が不安定で転倒し...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 29; no. 12; p. 1138 |
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Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
01.12.1992
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Summary: | 坐骨神経損傷の神経学的所見と運動歩行機能との関連について検討を加え報告した. 症例1は, 34歳女性, 腫瘍手術の際の坐骨神経切断例. 術後6カ月後, 短下肢装具, 両松葉杖使用で10分以上の歩行が可能となった. 表在知覚は足関節以下で脱失し, 位置覚は膝下から喪失していた. その後, 訓練により杖なし歩行が可能となった. 症例2は, 22歳女性, 坐骨神経不全損傷例, 受傷直後は完全麻痺を呈したが, 4カ月の経過で足関節背屈・底屈筋ともF程度まで回復した. 足関節以下の知覚脱失が残存し, 位置覚は足関節より遠位で喪失していた. 杖なし歩行が可能となったが, 平坦路以外では歩行が不安定で転倒し右膝を打撲しやすい. 症例3は, 21歳男性, 坐骨神経不全損傷例. 初診時, 前脛骨筋の筋力はF, 下腿三頭筋はPであった. 知覚障害は知覚鈍麻が主体で, 知覚脱失域は足部の外側のみであった. 位置覚は保たれており, 平坦地の歩行は問題ない. 悪路では不安定であるが, 視覚による確認は不要であった. 症例4は, 26歳女性, 坐骨神経不全損傷例. 受傷2週間ほどは疼痛と麻痺のため自立歩行は困難であった. 6カ月の経過で運動麻痺はほぼ改善したが, 痛覚脱失域が拇指に残存した. 以上の4症例をまとめると, 以下のごとくなる. (1)坐骨神経完全切断例でも, 簡単な足関節保持装具の使用により歩行機能が獲得される. (2)足関節の筋力がF程度でも, 足関節部の位置覚の失われた場合は歩行が不安定となる. (3)部分回復した不全麻痺症例は遠位優位の知覚障害の分布を示した. <質疑応答> 青木治人(聖マリアンナ医大):開放性ではない坐骨神経損傷の場合, 末梢まで回復を待つと時間がかかると思われるが, 他の部位の時より早めに手術的に損傷部位を確認することが必要かどうか. |
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ISSN: | 0034-351X |