緩徐に発症した痴呆を伴わない失語の一症例

1982年にMesulamが進行性失語を主症状とし, 年余にわたり痴呆を認めない症例をslowly progressive aphasia without generalized dementia(SPA)として報告した. 今回, 我々は, 明らかな脳卒中のエピソードはなく, 運動麻痺も認めず, 緩徐に発症した言語症状を主症状とする症例を経験したので紹介する. 症例は63歳の女性. 平成5年に記銘力の低下が出現, 平成7年に物品名の想起が困難になった. 平成8年には字性錯誤を認めるようになり, 5月検査目的で当院神経内科に入院し, 高次脳機能と言語評価目的でリハビリテーション科を受診した. 運...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 2; p. 154
Main Authors 松嶋康之, 内田真紀子, 蜂須賀研二, 緒方甫, 野崎康夫, 岡田和将
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.02.1997
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:1982年にMesulamが進行性失語を主症状とし, 年余にわたり痴呆を認めない症例をslowly progressive aphasia without generalized dementia(SPA)として報告した. 今回, 我々は, 明らかな脳卒中のエピソードはなく, 運動麻痺も認めず, 緩徐に発症した言語症状を主症状とする症例を経験したので紹介する. 症例は63歳の女性. 平成5年に記銘力の低下が出現, 平成7年に物品名の想起が困難になった. 平成8年には字性錯誤を認めるようになり, 5月検査目的で当院神経内科に入院し, 高次脳機能と言語評価目的でリハビリテーション科を受診した. 運動麻痺や失行・失認はなく, MMSは29点と痴呆は否定的であった. 言葉は流暢で, 喚語困難, 字性錯誤を伴う復唱障害が認められた. 画像所見では, 頭部CT,MRI上明らかな異常を認めず, SPECTにて, 有意ではないが, 左側頭葉および右視床で血流の低下を認めた. 本症例はMesulamのSPAと類似した特徴を示しており, 今後, 長期間の経過観察が必要だと思われた.
ISSN:0034-351X