副作用報告からみた非溶血性反応の背景因子

副作用情報の収集・解析はより安全な輸血を推進するための重要な手がかりとなる. 日本赤十字社は1993年より全国医療機関からの副作用自発報告について, 解析している. 今回, 特に報告の多い非溶血性副作用について, その特徴, 患者背景, 原因等について検討した. 1996年では輸血副作用として報告されたのは約700件であった. 非溶血性副作用は報告全体の70%以上を占め, その内1/3が重篤な副作用であるアナフィラキシー(様)反応, 血圧低下, 呼吸障害であった. 原因と考えられた血液は濃厚血小板(PC)が最も多く約60%を占めていた. またアナフィラキシー(様)反応, 血圧低下は輸血後短時間...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 183
Main Authors 栗原勝彦, 田所憲治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:副作用情報の収集・解析はより安全な輸血を推進するための重要な手がかりとなる. 日本赤十字社は1993年より全国医療機関からの副作用自発報告について, 解析している. 今回, 特に報告の多い非溶血性副作用について, その特徴, 患者背景, 原因等について検討した. 1996年では輸血副作用として報告されたのは約700件であった. 非溶血性副作用は報告全体の70%以上を占め, その内1/3が重篤な副作用であるアナフィラキシー(様)反応, 血圧低下, 呼吸障害であった. 原因と考えられた血液は濃厚血小板(PC)が最も多く約60%を占めていた. またアナフィラキシー(様)反応, 血圧低下は輸血後短時間で発現していた. 患者原疾患は, 白血病, 再生不良性貧血骨髄異形成症候群等の輸血を繰り返すことの多い血液疾患であった. アナフィラキシー(様)反応, 呼吸障害を呈した約半数の患者は, 過敏症などの輸血副作用の既往歴があった. この点から推測すると, 多くの副作用には免疫反応の関与が考えられた. 一方, 血圧低下のみの症例において調査できている限りでは, 複数の輸血歴があるにもかかわらず, 輸血副作用の既往はなかった. また原因究明のため, 抗血漿タンパク質抗体等の検査を行っても一部で検出されるものの副作用の原因になったかどうかは不明であった. 原因PCのほとんどがアフェレーシス由来のものであり, また白血球除去フィルター使用例が多かった. これらのことから, 採血器具や輸血器具等の関与も考えられる. 今後も原因の特定が難しい非溶血性副作用はより多くの情報を収集・解析し, その背景から原因究明の糸口を見つけ, 様々な情報を提供していくことが安全な輸血を行うために重要と考える. (謝辞)副作用報告, 検体の提出に協力して頂いた医療機関の方々, 情報収集にあたった全国血液センター医薬情報担当者に感謝いたします.
ISSN:0546-1448