失語症者の文理解における韻律的情報の役割
【目的】失語症者とプロソディに関する研究では, プロソディの知覚能力について検討しているものが多い. その多くで, 失語症者は, 感情的プロソディ知覚能力は比較的保たれているといわれている. これらのことから, プロソディが失語症者の言語理解の手掛かりとなっている可能性が示唆される. 今回は, 感情的プロソディが失語症者の聴覚的文理解を促進するかという点について検討した. 【方法】聴覚的理解障害が軽度から重度の失語症者55名に対し, 聴覚的短文理解課題28題を実施した. 感情的プロソディを込めて発話された短文(pro+条件)14題と中立的に発話された短文(pro-条件)14題をパソコンから流し...
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Published in | コミュニケーション障害学 Vol. 21; no. 3; p. 198 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本コミュニケーション障害学会
30.12.2004
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ISSN | 1347-8451 |
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Summary: | 【目的】失語症者とプロソディに関する研究では, プロソディの知覚能力について検討しているものが多い. その多くで, 失語症者は, 感情的プロソディ知覚能力は比較的保たれているといわれている. これらのことから, プロソディが失語症者の言語理解の手掛かりとなっている可能性が示唆される. 今回は, 感情的プロソディが失語症者の聴覚的文理解を促進するかという点について検討した. 【方法】聴覚的理解障害が軽度から重度の失語症者55名に対し, 聴覚的短文理解課題28題を実施した. 感情的プロソディを込めて発話された短文(pro+条件)14題と中立的に発話された短文(pro-条件)14題をパソコンから流し, パソコンの画面上に呈示された4種類の絵の中から, 該当する適切な絵を選択してもらい, 正答率を比較した, また, 絵の呈示方法によってプロソディ効果に差が現れるか検討するため, 失語群を絵の先行呈示時間5秒群と0秒群(聴覚的短文呈示と絵の呈示が同時)の2群に分け検討した. 【結果】失語症者全体の短文理解課題の結果は, pro+条件のほうが, 正答率が高かったが, pro-条件との差はわずかであった. 絵の先行呈示時間0秒群においては, pro+条件での正答率がpro-条件に比べ有意に高かった(p<.05). 5秒群ではpro-条件での成績が向上し, その結果pro+条件の成績が相対的に若干低くなったが, 2条件間に有意差はなかった. 【考察】以上の結果から, 感情的プロソディが失語症者の聴覚的短文理解の手掛かりとなることが示唆された. 特に, 絵の先行呈示時間0秒群という, 言語を理解する際に負荷がかかる場合に, 感情的プロソディがより重要な手掛かりとなることが示された. 【結論】失語症者の聴覚的言語理解に, 感情的プロソディが役立つ可能性をふまえ, 臨床場面への応用をはかりたい. |
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ISSN: | 1347-8451 |