車椅子駆動時の筋疲労

1994年本学会において, われわれは車椅子マラソン競技出場者における筋疲労を血中成分の変動により評価し, 報告した. 今回, 健常者に車椅子による登坂運動負荷モデルを組み, 筋疲労の評価を試みた. 対象は健常者男性7名(平均年齢23.9歳). 4.0 km/時で回転する車椅子用トレッドミル上を4.5%まで傾斜を上昇させながら, 45分間車椅子での登坂運動負荷を行った. 筋疲労の指標としたのはクレアチンキナーゼ(CK), ミオグロビン(Mb), 乳酸脱水素酵素(LDH)である. 採血は, 負荷直前・直後・24時間後・72時間後の4回実施した. CKは24時間のピークを有する有意な上昇が認められ...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 32; no. 11; p. 716
Main Authors 井手睦, 緒方甫, 小林昌之, 和田太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1995
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ISSN0034-351X

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Summary:1994年本学会において, われわれは車椅子マラソン競技出場者における筋疲労を血中成分の変動により評価し, 報告した. 今回, 健常者に車椅子による登坂運動負荷モデルを組み, 筋疲労の評価を試みた. 対象は健常者男性7名(平均年齢23.9歳). 4.0 km/時で回転する車椅子用トレッドミル上を4.5%まで傾斜を上昇させながら, 45分間車椅子での登坂運動負荷を行った. 筋疲労の指標としたのはクレアチンキナーゼ(CK), ミオグロビン(Mb), 乳酸脱水素酵素(LDH)である. 採血は, 負荷直前・直後・24時間後・72時間後の4回実施した. CKは24時間のピークを有する有意な上昇が認められた. Mbは負荷後の経過とともに上昇し, 24時間・72時間値が有意であった. LDHは運動負荷後いずれの時点でも有意な上昇は認められなかった. 他種の運動により生じる筋疲労を, これらの血中成分により評価した報告は少なくない. CKが24時間でピーク値を示したのはこれらの報告と一致するが, Mbが24時間・72時間値で有意差を示したことが, 車椅子駆動の特性であるかを今後検討しなくてはならない. 血中成分全体の変動からみると, 車椅子駆動による登坂運動は, 走運動よりもウェイトトレーニングに近い種類の運動負荷であると推察された.
ISSN:0034-351X