Transcranial Doppler(TCD)による意識障害患者の脳循環モニター
経頭蓋骨的ドップラー血流計(TCD)の脳循環モニターとしての有用性を評価する目的で, 様々の程度の意識障害を持つ患者の中大脳動脈(MCA)の血流を測定し, 検討を加えた. 対象は, 41歳~75歳の計10名で, 意識障害の程度は, GrasgowのComa Scale 11から3(3-3-9度方式I-3~III-300), 疾患の内訳は, 心停止後脳障害6例, くも膜下出血2例, 肝性昏睡1例, 髄膜炎1例であった. 脳神経反射, 自発呼吸の有無, 脳圧をできうるかぎりにおいて調べ, 検査施行時の血圧, 心拍数, 体温, 血液ガスを記録した. 測定には, 2MHzのパルスドップラーを用い, 側...
Saved in:
Published in | 蘇生 Vol. 10; p. 81 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.04.1992
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0288-4348 |
Cover
Summary: | 経頭蓋骨的ドップラー血流計(TCD)の脳循環モニターとしての有用性を評価する目的で, 様々の程度の意識障害を持つ患者の中大脳動脈(MCA)の血流を測定し, 検討を加えた. 対象は, 41歳~75歳の計10名で, 意識障害の程度は, GrasgowのComa Scale 11から3(3-3-9度方式I-3~III-300), 疾患の内訳は, 心停止後脳障害6例, くも膜下出血2例, 肝性昏睡1例, 髄膜炎1例であった. 脳神経反射, 自発呼吸の有無, 脳圧をできうるかぎりにおいて調べ, 検査施行時の血圧, 心拍数, 体温, 血液ガスを記録した. 測定には, 2MHzのパルスドップラーを用い, 側頭骨窓より約55mmの深さにおいて得られるMCAの血流波形から, 収縮期最大血流速度(V max), 平均血流速度(V mean), およびpulsatility Index(V max-Vd(拡張末期血流速度)/V mean)を求め測定項目とした. <結果>健常成人で得られたMCAのV max(96.7±21.8cm/sec), V mean(66.3±13.9cm/sec), PI(0.63±0.15)に対し, 意識障害の程度が強くなるにつれV mean, Vdは低下した. また, V maxの立ち上がりが急峻になり, PIの上昇を認めた. この傾向は, 深昏睡, 自発呼吸停止, 脳神経反射の消失から脳死を診断しえた症例において特に顕著に認められた. (意識レベルIII-300, 脳神経反射消失5例-うち3例自発呼吸停止, 2例アプネアテスト未施行-におけるV mean=22.1±6.8cm/sec, PI=3.32±1.20). <結語>意識障害の程度が強く, 脳に広範な傷害が疑われる症例では, TCDによる中大脳動脈の血流速度測定で, 平均血流速度, 拡張末期血流速度の著明な低下を認め, またpulsatility indexの上昇が認められる. この傾向は意識障害の程度が強くなるにつれ顕著となり, 疾患によらず一律に認められる所見であることから, TCDが脳の障害の程度を知るうえで, また予後の予測において有用な補助診断法になりうるものと考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0288-4348 |