下顎骨に浸潤した小児急性リンパ性白血病の1例

小児の白血病は小児癌の約50%を占めるが, そのほとんどは急性白血病である. なかでも急性リンパ性白血病が多い. また, 小児では成人と異なり骨髄の造血部分が多く脂肪髄が少ないため, 一旦骨に白血病細胞が増殖するとすぐに進展しやすい. そのため一般的には, 成人と比較すると小児では高率に骨病変が認められる. 骨への浸潤頻度は成人では10%前後にすぎないのに対して, 小児では報告者によって多少の違いはあるものの50~70%の症例に認められるといわれている. それでも, 小児急性白血病の下顎骨のX線所見についての本邦での報告は少なく, 他部位の骨変化ほど明らかにはされていない. 症例は10歳男児で...

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Published in小児口腔外科 Vol. 2; no. 1; p. 87
Main Authors 別府和紀, 竹之下康治, 岡増一郎, 松本敏秀, 永利義久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 01.05.1992
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ISSN0917-5261

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Summary:小児の白血病は小児癌の約50%を占めるが, そのほとんどは急性白血病である. なかでも急性リンパ性白血病が多い. また, 小児では成人と異なり骨髄の造血部分が多く脂肪髄が少ないため, 一旦骨に白血病細胞が増殖するとすぐに進展しやすい. そのため一般的には, 成人と比較すると小児では高率に骨病変が認められる. 骨への浸潤頻度は成人では10%前後にすぎないのに対して, 小児では報告者によって多少の違いはあるものの50~70%の症例に認められるといわれている. それでも, 小児急性白血病の下顎骨のX線所見についての本邦での報告は少なく, 他部位の骨変化ほど明らかにはされていない. 症例は10歳男児で, 6歳時に急性リンパ性白血病と診断され本学小児科にて経過観察中であったが, 平成2年2月初旬より右側下唇の知覚鈍麻が出現したため, 本学小児歯科を受診した. 知覚鈍麻などの口腔症状は白血病の症状に呼応して出現し, 同科でのX線検査にて下顎骨に複数の中心性骨吸収像を呈する病変が見出されたので, 顎骨病変の精査の目的で当科を受診した. 当科初診時の所見は, オトガイ部の知覚鈍麻およびX線検査にて, 右側下顎臼歯部に複数の中心性骨吸収像が認められたため, 平成2年2月19日, 下顎骨病変の確定診断のため, ステロイド・カバーを施した後, 局所麻酔下に病変部の生検を施行した. その結果, 下顎骨への白血病細胞の浸潤が確認された. 今回, 演者らは, オトガイ部の知覚鈍麻と骨変化が出現しやすいといわれている小児急性白血病患児の下顎骨に経過に呼応してX線所見で特徴的な変化を呈した一例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
ISSN:0917-5261