装具の使用により嚥下が容易となった四肢麻痺硬直型症例
【目的】頚部の筋緊張が咽頭期の過程において影響を与えていることは諸家の報告にあるように明らかである. しかしながら, 症例をもとにした報告は少ない. そこで今回, 作業療法場面において短対立装具を用いリラックスした姿勢をとらせることで食事介助が容易になった四肢麻痺硬直型症例を経験した. この症例に対し筋電図結果をもとに若干の考察を加えて報告する. 【症例】65歳の男性. 脳幹梗塞により四肢麻痺・摂食嚥下障害・構音障害を呈する. 現病歴は, 平成8年7月11日発症し, 当院にてCT施行後, 脳幹梗塞と診断される. 発症当初の意識レベルはJapan coma scaleでIII-300であり, 四...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 3; no. 2; pp. 69 - 70 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
01.12.1999
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ISSN | 1343-8441 |
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Summary: | 【目的】頚部の筋緊張が咽頭期の過程において影響を与えていることは諸家の報告にあるように明らかである. しかしながら, 症例をもとにした報告は少ない. そこで今回, 作業療法場面において短対立装具を用いリラックスした姿勢をとらせることで食事介助が容易になった四肢麻痺硬直型症例を経験した. この症例に対し筋電図結果をもとに若干の考察を加えて報告する. 【症例】65歳の男性. 脳幹梗塞により四肢麻痺・摂食嚥下障害・構音障害を呈する. 現病歴は, 平成8年7月11日発症し, 当院にてCT施行後, 脳幹梗塞と診断される. 発症当初の意識レベルはJapan coma scaleでIII-300であり, 四肢の自発運動もみられなかった. 同年9月3日からは, 呼吸器の改善と関節可動域維持を目的に理学療法を開始した. 意識障害・全身状態の改善がみられたため, 平成9年8月7日作業療法を開始した. 【画像所見】MRIT2強調像では, 左の脳幹に高信号を認めた. また, とくに右の側脳室の拡大, 脳溝の拡大を認め, とくに前頭葉の脳萎縮もみられた. その他, 前頭葉内側面において高信号を示す領域が認められ, 虚血があるものと思われた. 【作業療法開始時の評価】作業療法開始時は意識は清明, 日常生活はすべて全介助であった. また, 日常会話は理解可能であり, 頚の回旋, 閉眼で意思表示を行っていた. 運動機能は右上肢は痙縮が強く廃用手であり, 左上肢はわずかに動きがみられたが抵抗症を認め補助手としての使用も困難であった. 体幹・下肢においては痙縮・抵抗症が強く坐位保持も不可能どころか頚部の3~5分の伸展も困難であり, 全身持久力の低下もみられた. 腱反射は右側においては亢進しているが左側は減弱していた. また, 左側で抵抗症がみられ, 手掌オトガイ反射・把握反射が陽性など前頭葉症状を認めた. |
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ISSN: | 1343-8441 |