心停止蘇生後脳障害の検討
心停止蘇生後脳障害は, 蘇生およびその後の集中治療が克服すべき心停止治療上最後の関門である. われわれは過去10年間に413例のCPRを経験したが, 今回これらの蘇生例を検討し, 蘇生後脳障害発生に関し若干の知見を得たので考察を加え報告した. <対象>昭和49年~昭和59年の間の心停止蘇生例の内で蘇生後24時間以上生存し, かつ心停止原因に脳病変を有しない78例である. <方法>蘇生6ヵ月後の転帰によりGR(good recovery), D(disability), PVS(persistent vegetative state), D_I (brain death)...
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Published in | 蘇生 Vol. 4; pp. 101 - 102 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.03.1986
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 心停止蘇生後脳障害は, 蘇生およびその後の集中治療が克服すべき心停止治療上最後の関門である. われわれは過去10年間に413例のCPRを経験したが, 今回これらの蘇生例を検討し, 蘇生後脳障害発生に関し若干の知見を得たので考察を加え報告した. <対象>昭和49年~昭和59年の間の心停止蘇生例の内で蘇生後24時間以上生存し, かつ心停止原因に脳病変を有しない78例である. <方法>蘇生6ヵ月後の転帰によりGR(good recovery), D(disability), PVS(persistent vegetative state), D_I (brain death), D_II (other complicated death)にわけ, 心停止原因, 心停止時間(CPRまで), CPR時間, 心停止場所, 意識レベルの変化, 神経症状について検討した. <結果>(1)78例の6ヵ月転帰は, GR12, D5, PVS7, D_I 21, D_II 33, であった. (2)心停止原因は, 対象全体で窒息26例, 心疾患18例, 血性ショック10例などであった. 特にPVSでは4例が喘息, 3例が窒息に原因した心停止であった. (3)心停止時間(CPRまで)が明らかな症例の内, 20分を越えるものはすべてD_I であり, 5分以上を要した症例の64%の転帰がPVSないしD_I であった. また心停止原因でも窒息, 喘息が多かった. (4)心停止場所ではGRで病院内, D_I で病院外が圧倒的に多かった. (5)GRでは36時間目までに全例GCS8以上に回復した. 痙攣はD_I D_II に多く, 予後不良の徴候と考えられた. <考察およびまとめ>心停止時間(CPRまで)が長い症例にPVS, D_I が多く, CPRの反応は良好で窒息や喘息などが心停止原因となっていることより, 蘇生後発生する非可逆性脳障害は, 心停止時間が長くとも心停止原因除去がたやすく, CPRに良好な反応を示しうる状態が発生条件の一つと考えられた. |
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ISSN: | 0288-4348 |