血流再開後1時間目に投与されたnicardipineの脳組織血流への影響
先にわれわれは, 心肺蘇生時, 蘇生成功直後よりnicardipine(NC)を持続投与することにより, 血流再開後に出現する脳血流の低下を防止することができ, しかもNCの量は, 末梢血圧にほとんど影響をおよぼさない少量で有効であると報告した. しかし, 脳血流の低下が成立してしまった血流再開3時間目の投与では無効であった. そこで今回は, 脳血流低下が出現しはじめる1時間目より比較的大量のNC投与を行って検討した. <方法>雑種成犬6頭を0.3%ハロセン麻酔, 人工呼吸下で, 上・下大静脈, 大動脈起始部へテープを巻き, これをしめて10分間の全脳虚血とした. 脳組織血流は,...
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Published in | 蘇生 Vol. 4; p. 82 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.03.1986
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 先にわれわれは, 心肺蘇生時, 蘇生成功直後よりnicardipine(NC)を持続投与することにより, 血流再開後に出現する脳血流の低下を防止することができ, しかもNCの量は, 末梢血圧にほとんど影響をおよぼさない少量で有効であると報告した. しかし, 脳血流の低下が成立してしまった血流再開3時間目の投与では無効であった. そこで今回は, 脳血流低下が出現しはじめる1時間目より比較的大量のNC投与を行って検討した. <方法>雑種成犬6頭を0.3%ハロセン麻酔, 人工呼吸下で, 上・下大静脈, 大動脈起始部へテープを巻き, これをしめて10分間の全脳虚血とした. 脳組織血流は, 局所電解式水素クリアランス法にて測定し, NCは血流再開後1時間目より10μg/kg静注, 引き続き1μg/kg/minで90分間持続維持した. 平均血圧を60mmHg以上に保っため, 必要に応じてエピネフリンが使用された. <結果ならびに考案>脳虚血後血流再開10分目で虚血前値の144.8%へ上昇した脳血流は, 60分目で92.6%へと低下, その時点よりNC投与にもかかわらず血流はさらに低下し, NC投与中は75~80%となった. これは, NCを血流再開直後より投与し, 脳血流が虚血前値に維持された前回の結果ときわだった対比を示した. さらに, NC投与停止によっても脳血流は変化せず, NCが脳血流に影響していなかったことを示唆した. この間循環系は, 平均血圧は60mmHg以上に保たれているものの, NC投与中は非投与時より低く保たれ, しかし心拍出量は非投与時よりも高く, ほぼ虚血前値と等しかった. 全末梢血管抵抗(TPR)は, NCの投与により虚血前値の49~57%へと低下を示し, 今回のNC量がTPRを低下させるには十分な量であったことを示していた. したがって, 脳虚血・血流再開後1時間目, すなわち血流低下の出現しはじめてしまった時期, でのNC投与は, たとえその投与量が多目であっても, その後に出現する脳血流の低下を阻止できない. |
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ISSN: | 0288-4348 |