当院における末梢血幹細胞移植の現状と問題点

末梢血幹細胞移植(PBSCT)は血液腫瘍や薬剤感受性のある固形癌などの治療において今後増加すると考えられる. 我々も1994年より1997年現在までに末梢血幹細胞(PBSC)の採取, 凍結保存を30例について実施してきた. 輸血部の業務としての現状について報告する. 【対象】対象は1997年11月現在, 血液疾患群(A群)して, NHL12例, CML1例, ALL1例, APL1例, AML1例, MM1例, 固形腫瘍群(B群)として乳癌11例, ユーイング肉腫1例, 神経細胞芽肉腫1例の計30例で, のべ96回の採取を対象とした. 【方法】1)採取はCS3000Plus(Baxter)で実...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 2; p. 164
Main Authors 冨山秀和, 井上理恵子, 溝上千秋, 金子強, 西田淳二, 鎌倉正英
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1998
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ISSN0546-1448

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Summary:末梢血幹細胞移植(PBSCT)は血液腫瘍や薬剤感受性のある固形癌などの治療において今後増加すると考えられる. 我々も1994年より1997年現在までに末梢血幹細胞(PBSC)の採取, 凍結保存を30例について実施してきた. 輸血部の業務としての現状について報告する. 【対象】対象は1997年11月現在, 血液疾患群(A群)して, NHL12例, CML1例, ALL1例, APL1例, AML1例, MM1例, 固形腫瘍群(B群)として乳癌11例, ユーイング肉腫1例, 神経細胞芽肉腫1例の計30例で, のべ96回の採取を対象とした. 【方法】1)採取はCS3000Plus(Baxter)で実施し, 総単核珠数とCD陽性細胞数を測定した. また採取前後のヘモグロビンと血小板の値を比較した. 2)採取中は患者監視装置(COLIN BP-508)にてバイタルをモニターした. 3)凍結保存は採取バックをSCD312(TERUMO)にて500mlクリオサイトバック(Baxter)と無菌的に連結して細胞を移し, 簡便凍結法にて80℃で一時保存し, 翌日, 液体窒素保存システムCMR-8030(フタバメディカル)に保存した. 4)移植時は輸血部で細胞を1パックづつ解凍し, その都度氷冷して無菌室または簡易無菌室まで運搬した. 【結果】1)1回あたりの単核球数とCD34陽性細胞数はA群では平均2.04×10^8 /kg, 2.95×10^6 /kg, B群では平均1.36×10^8 /kg, 1.00×10^8 /kgであった. 1回あたりの平均処理量は9000mlで, 採取後, ヘモグロビンで0.39g/dl, 血小板1.41×10^3 /mm^3 の減少が認められた. 2)採取中に血圧および心電図が大きく変化した例は認められなかったが, 4例にクエン酸によると考えられるVVR様の症状が囲められた. 3)凍結保存はフリーザーの故障により, 温度が上昇した例とクリオサイトバックのチューブの付け根が破損するトラブルが各々1例あった. また解凍および移植の際にフィブリン析出などの問題は生じなかった. 採取した30例のうち, 3例が未移植(豪族の希望により移植中止が2例, 移植前に死亡が1例)で, また他施設で移植した例が1例あった. 【考察】PBSCTは超大量化学療法に対する造血幹細胞の救援療法としてのみならず, 同種幹細胞移植等今後, 更に普及していくと考えられる. 当輸血部でも1994年よりPBSCの採取, 凍結保存を開始し, 現在までに30例, のべ96回の採取を実施してきた. 今後の問題として, 採取を実施するための労力の軽減や件数増加に伴う保存スペースの確保, 使用されなかった細胞の処理, 移植中止の際の消耗品のコストなど, 効率のよい採取時期等を含め, 検討する予定である. PBSCTを安全に効率よく実施し普及するためには採取から解凍までの輸血部での一括管理が不可欠である.
ISSN:0546-1448