くも膜下腔クロニジンおよびミダゾラム投与の抗侵害刺激作用における相互作用

オピエートとクロニジンあるいはミダゾラムを複合投与したとき, 脊髄においてそれぞれ相乗的抗侵害刺激作用を発現することが認められている. しかし, クロニジンとミダゾラムの抗侵害刺激作用における相互作用についての報告は少ない. 我々は以前, 脊髄後角細胞においてこれら薬物間には, 相乗的抑制作用のあることを電気生理学的方法により報告した. 今回はbehavioral testを用いて侵害刺激に対する作用を検討したので報告する. 実験方法:雄性Sprague-Dawley系ラット(230-280g)を用いた. ネンブタール麻酔下に, 上部胸椎よりカテーテル(PE-10)をくも膜下腔に挿入し先端を腰...

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Published inPAIN RESEARCH Vol. 7; no. 3; p. 243
Main Authors 土屋典生, 脇田勝敏, 奥田隆彦, 宮本和之, 末包慶太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本疼痛学会 01.12.1992
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ISSN0915-8588

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Summary:オピエートとクロニジンあるいはミダゾラムを複合投与したとき, 脊髄においてそれぞれ相乗的抗侵害刺激作用を発現することが認められている. しかし, クロニジンとミダゾラムの抗侵害刺激作用における相互作用についての報告は少ない. 我々は以前, 脊髄後角細胞においてこれら薬物間には, 相乗的抑制作用のあることを電気生理学的方法により報告した. 今回はbehavioral testを用いて侵害刺激に対する作用を検討したので報告する. 実験方法:雄性Sprague-Dawley系ラット(230-280g)を用いた. ネンブタール麻酔下に, 上部胸椎よりカテーテル(PE-10)をくも膜下腔に挿入し先端を腰椎膨大部に留置した. カテーテル留置1週間を経過し, 運動学的に異常のないものを選び, 2%リドカイン/10μl注入にて尾, 後肢の運動麻痺, 知覚脱出の発現するものを実験の対象とした. 鎮痛効果の判定はtail-flick testおよびpaw-pressure testを用いて侵害刺激に対する反応を測定した. 薬物は10μl生理食塩水に溶解し, 投与量によりクロニジン単独投与群(2.5μg, 25μg), ミダゾラム単独投与群(10μg, 30μg), および両者併用投与群(クロニジン2.5μg+ミダゾラム10μg)の5群について検討した. 薬剤投与前のそれぞれ対照値の逃避運動潜時を測定した後, 5, 15, 30, 60, 90, 120分後に同様に測定した. 結果:クロニジン2.5μgおよびミダゾラム10μg投与には, 抗侵害刺激作用は認められなかった. しかし, クロニジン25μgおよびミダゾラム30μg投与はtail-flick testおよびpaw-pressure testにおいて, ともに投与後5分で抗侵害刺激作用が発現し, 90~120分で対照値に戻った. また, それぞれ単独では抑制しない量のクロニジン2.5μgとミダゾラム10μgの両者併用投与は, 投与後5分で抗侵害刺激作用が発現し, 10~15分で最大抑制となり, 60~90分で対照値に戻った. 考察及び結語:ミダゾラムはGABA受容体複合体, クロニジンはα_2 受容体を介して鎮痛作用を発現する. 両受容体は構造が異なるので, 受容体レベル前の介在ニューロンレベルで相乗効果が発現されると考えられる. 単独では抑制しない量のクロニジンおよびミダゾラムの複合投与が抗侵害刺激作用を発現することから, これらの薬剤は脊髄において相乗的抗侵害刺激作用をもつことが示唆された.
ISSN:0915-8588