胸腔鏡検査による肝性胸水の診断と病態検索

〔目的〕肝性胸水は, 多量に貯留した腹水が胸腹腔の交通部位を介して胸腔に移行することにより急速, 大量に胸水貯留を来たす稀な病態である. 我々は肝性胸水の診断, 病態検索の目的で, 2症例に胸腔鏡検査を行った. 〔症例〕症例1;72歳, 女性. 昭和61年より肝硬変(C型), 肝細胞癌をに対する加療. 昭和62年より右側胸水のコントロールのため入退院を繰返し, 平成4年2月呼吸困難のため8度目の入院. 胸腔鏡検査では横隔膜に形成された嚢胞と欠損孔を認め, 腹腔へ注入したICGの胸腔内流入を確認し肝性胸水と診断した. 症例2:55歳, 男性. 昭和62年に肝硬変(B型)を指摘, 平成4年より肝細...

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Published in気管支学 Vol. 20; no. 3; p. 243
Main Authors 中村敦, 山田保夫, 細田昌良, 永田章, 浅野高行, 児島康浩, 山腰雅宏, 鳥居正芳, 山本俊信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 25.04.1998
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Summary:〔目的〕肝性胸水は, 多量に貯留した腹水が胸腹腔の交通部位を介して胸腔に移行することにより急速, 大量に胸水貯留を来たす稀な病態である. 我々は肝性胸水の診断, 病態検索の目的で, 2症例に胸腔鏡検査を行った. 〔症例〕症例1;72歳, 女性. 昭和61年より肝硬変(C型), 肝細胞癌をに対する加療. 昭和62年より右側胸水のコントロールのため入退院を繰返し, 平成4年2月呼吸困難のため8度目の入院. 胸腔鏡検査では横隔膜に形成された嚢胞と欠損孔を認め, 腹腔へ注入したICGの胸腔内流入を確認し肝性胸水と診断した. 症例2:55歳, 男性. 昭和62年に肝硬変(B型)を指摘, 平成4年より肝細胞癌, 食道静脈瘤に対する加療, 平成8年より腹水のコントロールのため入退院を繰り返していた. 平成9年2月腹水の再貯留を来し8度目の入院. アルブミン補給と利尿剤, 肝庇護剤の投与を行なうも腹水が遷延, 4月下旬より呼吸困難が出現し, 胸部レ線上右多量胸水を認めた. 胸腔鏡検査では横隔膜の嚢胞形成を認め, ICGの腹腔から胸腔内への流入を確認, 肝性胸水と診断した. 〔結語〕肝硬変症例の胸水貯留例のうち, 肝性胸水症例の診断, 病態検索には胸腔鏡検査が有用と思われた.
ISSN:0287-2137