全脳虚血時のNeuron Specific Enolaseの変動

Neuron Specific Enolase(NSE)は, 解糖系の酵素enolaseのr-subunitで, 神経細胞の破壊に伴い髄液, 血中濃度が上昇することが知られている. 本報告では, 心肺蘇生後脳障害におけるNSEの変動と, 重症度・予後との関連を検討した. <対象および方法>心肺蘇生後24時間以上生存した26例で, 予後より次の3群に分類した. A群:脳死移行例9例(内DOA7例), B群:遷延性意識障害例8例(同4例), C群:完全回復例9例(同1例). 血液, 髄液NSEの測定には, 二抗体RIA法(栄研キット)を用いた. <結果>蘇生後心拍動が再開す...

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Published in蘇生 Vol. 6; p. 68
Main Authors 広瀬隆一, 杉本勝彦, 新藤正輝, 相馬一亥, 前川和彦, 大和田隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.05.1988
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ISSN0288-4348

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Summary:Neuron Specific Enolase(NSE)は, 解糖系の酵素enolaseのr-subunitで, 神経細胞の破壊に伴い髄液, 血中濃度が上昇することが知られている. 本報告では, 心肺蘇生後脳障害におけるNSEの変動と, 重症度・予後との関連を検討した. <対象および方法>心肺蘇生後24時間以上生存した26例で, 予後より次の3群に分類した. A群:脳死移行例9例(内DOA7例), B群:遷延性意識障害例8例(同4例), C群:完全回復例9例(同1例). 血液, 髄液NSEの測定には, 二抗体RIA法(栄研キット)を用いた. <結果>蘇生後心拍動が再開するまでの時間は, A群46.3±12.7分(m±SD), B群21.9±8.2分, C群9.9±6.6分であり, 各群間に有意な差があった. 蘇生後24時間以内の血清NSEは, A群44.3±10.1(ng/ml, m±SE), B群14.1±3.2, C群12.9±2.4で, A群が有意に(P<0.05)高値であった. 血清NSEは, C群では2~3日で正常域へと減少するのに対して, B群では2~7日目の間漸増し, その後漸減するパターンをとった. 痙攣が持続する例では, 長期間血清NSEが高値を示した. 髄液NSEは, 蘇生後24時間以内にA群では著しい高値を示し, C群の100倍以上であった. <結論>心肺蘇生後のNSEの変動は神経学的重症度とよく関連し, 早期の予後判定の指標となり得る.
ISSN:0288-4348