外傷性大動脈損傷により脊髄梗塞をきたした1例

外傷性胸部大動脈損傷により脊髄梗塞をきたした1例を経験したので検討を加えて報告する. 「症例」21歳, 男性. 乗用者助手席に乗車中, 対向車と衝突し前胸部と前額部を打撲し, 当院ICUに搬送された. 胸部X線, 胸部CT, 経食道エコーにより下行大動脈損傷が認められ, 緊急に大動脈置換術が施行されたが, 術後Th12レベルの対麻痺が認められた. 術後のMRIではT2強調画像で, 脊髄は第4胸椎レベルより遠位にかけて, high intensity areaを呈した. 術後は完全対麻痺をきたしたがリハビリテーションを施行し, 術後4ヵ月で, 車椅子トランスファー自立, 自己導尿可能となり転院と...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 11; p. 810
Main Authors 宮畑育子, 門智恵子, 戸田克広, 宗重博, 木村浩彰, 吉村理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:外傷性胸部大動脈損傷により脊髄梗塞をきたした1例を経験したので検討を加えて報告する. 「症例」21歳, 男性. 乗用者助手席に乗車中, 対向車と衝突し前胸部と前額部を打撲し, 当院ICUに搬送された. 胸部X線, 胸部CT, 経食道エコーにより下行大動脈損傷が認められ, 緊急に大動脈置換術が施行されたが, 術後Th12レベルの対麻痺が認められた. 術後のMRIではT2強調画像で, 脊髄は第4胸椎レベルより遠位にかけて, high intensity areaを呈した. 術後は完全対麻痺をきたしたがリハビリテーションを施行し, 術後4ヵ月で, 車椅子トランスファー自立, 自己導尿可能となり転院となった. 「考察」本症例の脊髄梗塞は, 術前の検査および術中所見より, 診断から手術までに起こったと考えられる. 外傷による下行大動脈損傷部位から末梢に向けて解離が進行し, 外膜下血腫が大動脈内腔を圧迫し, 下肢虚血, 腎等の内臓虚血をきたし, 肋間動脈血流, 特にAdamkuwicz動脈の血流が途絶したため脊髄梗塞をきたしたと考えられる. 「まとめ」鈍的胸部外傷による大動脈損傷の死亡率は高いとされているが, 一方病院に搬送された場合は, 救命率も高くなってきている, また本症例のように大動脈損傷は進行性大動脈解離による脊髄梗塞を引き起こす危険性もあることから経食道エコーによる経時的な観察が重要である.
ISSN:0034-351X