海水温浴運動が呼吸循環器系におよぼす影響

先行研究において, 「塩類および海水温浴」が入浴時の深部温, 皮膚温, 心拍数, 心拍出量, および出浴時の血圧, 末梢血管抵抗低下などにおよぼすと報告されているが, エネルギー代謝に関する報告がない. このことから, 本研究では「海水温浴」, 「海水温浴中の運動」が体温, エネルギー代謝および呼吸循環系におよぼす影響について検討した. まず, 実験1では, 健常な成人男性7名(23~24歳)を対象とし, 測定機器装着後, 10分の安静→20分の入浴(40℃)→40分の出浴を「淡水温浴」および「海水温浴」の両条件にて検討した. その結果, 「海水温浴」は「淡水温浴」に比べ, 入浴時の体温(直腸...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 64; no. 1; p. 43
Main Authors 内田直人, 山本利春, 成澤三雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本温泉気候物理医学会 20.11.2000
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Summary:先行研究において, 「塩類および海水温浴」が入浴時の深部温, 皮膚温, 心拍数, 心拍出量, および出浴時の血圧, 末梢血管抵抗低下などにおよぼすと報告されているが, エネルギー代謝に関する報告がない. このことから, 本研究では「海水温浴」, 「海水温浴中の運動」が体温, エネルギー代謝および呼吸循環系におよぼす影響について検討した. まず, 実験1では, 健常な成人男性7名(23~24歳)を対象とし, 測定機器装着後, 10分の安静→20分の入浴(40℃)→40分の出浴を「淡水温浴」および「海水温浴」の両条件にて検討した. その結果, 「海水温浴」は「淡水温浴」に比べ, 入浴時の体温(直腸温, 平均皮膚温, 平均体温)が高い傾向にあり, 入浴時および出浴時の血圧(収縮期血圧, 拡張期血圧, 平均血圧)が低い傾向にあった. このことから, 海水温浴は, 海水の被膜効果による保温効果があり, それが出浴後の体温低下も少なくし, 血圧の低下を持続させた. この効果は, 高血圧患者などのリハビリテーションに対して応用できると考えた. 次いで, 実験2では, 40℃の淡水および海水温浴中で, 55回/分のテンポで両脚交互屈伸運動を20分間行わせ, 体温, エネルギー代謝および呼吸循環系の変化について検討した. その結果, 入浴時において「海水運動」が, 「淡水運動」に比べ, 心拍数, 体温(直腸温, 上腕部皮膚温)が高い傾向を示し, 血圧(収縮期血圧, 拡張期血圧, 平均血圧, 脈圧)は「淡水運動」と同程度の値を示した. このことから, この程度の運動強度であれば, 「海水運動」は, 「海水温浴」や「淡水運動」よりも心拍数を上昇させることができ, そして血圧の上昇もないことから高血圧患者などのリハビリテーションに応用できると考えた.
ISSN:0029-0343