Gerbich(Ge)不適合輸血の1例
Gerbich(Ge)型に対する抗体による不適合輸血の1例を経験したので, 検査結果および経過を報告する. 〔症例〕患者は右肺癌手術のため胸部外科に入院した62才の男性で輸血歴はない. 輸血を必要とする手術のため, 患者血清の抗体スクリーニングを行ったところ, パネルセルのすべての血球にアルブミン法およびクームス法で凝集が見られた. Jr^a 陰性血球との反応が非常に弱いため, 抗Jr^a +αを疑い, 当センターにJr^a 陰性解凍赤血球濃厚液2単位の供給を依頼された. ところが, 手術前の交差試験が不適合と判定されて, 当センターに検査が依頼された. しかし, この時点で輸血が必要となった...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 35; no. 2; p. 211 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.1989
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | Gerbich(Ge)型に対する抗体による不適合輸血の1例を経験したので, 検査結果および経過を報告する. 〔症例〕患者は右肺癌手術のため胸部外科に入院した62才の男性で輸血歴はない. 輸血を必要とする手術のため, 患者血清の抗体スクリーニングを行ったところ, パネルセルのすべての血球にアルブミン法およびクームス法で凝集が見られた. Jr^a 陰性血球との反応が非常に弱いため, 抗Jr^a +αを疑い, 当センターにJr^a 陰性解凍赤血球濃厚液2単位の供給を依頼された. ところが, 手術前の交差試験が不適合と判定されて, 当センターに検査が依頼された. しかし, この時点で輸血が必要となったため, やむをえず上記の解凍赤血球濃厚液の輸血を行った. そして, 患者血清中の抗体を精査した結果, 抗Geであることが判明した. 〔検査結果〕O型赤血球と患者血清との反応は, クームス法陽性(抗体のサブクラスIgG_1 とIgG_2 , 抗体価1:16), 食塩水法およびアルブミン怯弱陽性, ブロメリン法と自己対照は陰性であった. また患者血清とGe陰性血球4例との反応は陰性で, 患者血球と抗Ge(人由来2例, モノクロ2例)との反応は陰性であった. 〔経過〕輸血後1日目にT-bilが1.6(d-bil0.4mg/dl)と上昇したが, 5日目には正常化した. 代って, Hb, Htがやや低下した. 一過性のビリルビン値上昇の原因が冷凍血液使用のためか, 抗Geによる溶血のためかは断定できないが, 幸い発熱, 血尿などの副作用はみられなかった. 〔考察〕本例における抗Geは自然抗体と思われ, かつIgG_1とIgG_2 に属し, 溶血活性が低い抗体であったと思われる. 〔結論〕Ge陰性で, 抗Ge抗体陽性の患者にGe陽性血液が輸血されたが, この不適合輸血後に副作用のほとんど見られなかった1例を経験した. |
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ISSN: | 0546-1448 |