脊髄小脳変性症(SCD)患者における歩行分析

【目的】運動失調は中枢神経系の制御機構や末梢からの固有感覚系のフィードバック機構の障害であり, 脊髄小脳失調症(SCD)はその代表的な疾患である. しかしながらその症状を客観的なデータとして捉えることが困難であった. そこでSCD患者に失調性歩行障害の評価として床反力計を用いて歩行分析を行い, 特に距離因子, 時間因子により有用性を検討した. 【対象】SCD患者10例(すべてOPCA型, 遺伝性4例), 罹病期間10カ月~20年(平均4年8カ月), 8例に錐体路症状, 6例に自律神経症状を認めた. 対照として健常人5例を用いた. 【方法】大型床反力計(アニマ社製)を用いて, 7 mの歩行路を自...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 29; no. 11; p. 941
Main Authors 瀬戸牧子, 赤澤美保子, 長郷国彦, 吉村俊朗, 辻畑光宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.11.1992
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ISSN0034-351X

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Summary:【目的】運動失調は中枢神経系の制御機構や末梢からの固有感覚系のフィードバック機構の障害であり, 脊髄小脳失調症(SCD)はその代表的な疾患である. しかしながらその症状を客観的なデータとして捉えることが困難であった. そこでSCD患者に失調性歩行障害の評価として床反力計を用いて歩行分析を行い, 特に距離因子, 時間因子により有用性を検討した. 【対象】SCD患者10例(すべてOPCA型, 遺伝性4例), 罹病期間10カ月~20年(平均4年8カ月), 8例に錐体路症状, 6例に自律神経症状を認めた. 対照として健常人5例を用いた. 【方法】大型床反力計(アニマ社製)を用いて, 7 mの歩行路を自由歩行させ, 同時にフットスイッチで歩行周期を導出した. 分析項目は床反力の垂直分力, cadence, 歩行速度, 距離因子(step width, step length, stride length), 時間因子(左右単脚支持期, 二重支持期)とし, それぞれの変動係数も含めて統計学的処理を行った. 【結果】SCDの歩行パターンは多彩で, cadenceは個人の変動の幅が大きく, 距離因子, 時間因子は健常人と比し有意差が認められた. 力積の制動, 駆動成分は変動が大きかった. パラメーターをクラスター分析し, 台形状と階段状の2群に分けられた. 【結論】SCD患者の失調症状は歩行分析においても多彩であり, 今後症状の経時的変化も含めて症例の積み重ねが必要と考えられた.
ISSN:0034-351X