Botulinum toxinによる筋痙縮の治療の試み

「目的」筋痙縮はADLの妨げとなることが多い. 抗痙縮剤投与や外科的治療が行われているが, 患者によっては充分な効果が得られないこともある. Botulinum toxin(以下BTX)は神経終未においてアセチルコリン放出を抑制することによって筋の麻痺をきたす. 欧米ではジストニーをはじめとする神経疾患の治療として用いられ, 最近では筋痙縮の治療にも試みられ安全性, 有効性が報告されている. 今回, 痙縮に対するBTX治療の効果について調査する機会を得たので報告する. 「対象と方法」1994年2月より1997年1月に英国Southampton大学リハビリテーション外来を受診した患者13例(男性...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 11; p. 824
Main Authors 渡辺百合子, AMO Bakheit, DL McLellan
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1997
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ISSN0034-351X

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Summary:「目的」筋痙縮はADLの妨げとなることが多い. 抗痙縮剤投与や外科的治療が行われているが, 患者によっては充分な効果が得られないこともある. Botulinum toxin(以下BTX)は神経終未においてアセチルコリン放出を抑制することによって筋の麻痺をきたす. 欧米ではジストニーをはじめとする神経疾患の治療として用いられ, 最近では筋痙縮の治療にも試みられ安全性, 有効性が報告されている. 今回, 痙縮に対するBTX治療の効果について調査する機会を得たので報告する. 「対象と方法」1994年2月より1997年1月に英国Southampton大学リハビリテーション外来を受診した患者13例(男性8例, 女性5例)平均年齢30.9歳(5~61歳)を対象とした. 痙縮の原因疾患は脳性麻痺(以下CP)4例, 多発性硬化症3例, 頭部外傷2例, その他4例であった. 効果については臨床所見と患者あるいは家族からの機能, ADL改善度の報告により評価した. 「結果と考察」BTXは合計38回注射された. 13例中10例(76.9%)で治療ゴールが到達できた. BTXの臨床効果は平均3か月持続するといわれているが, 16歳以下, およびCPで効果がより持続していた. 特別な副作用は認めなかった. BTXは痙縮の治療において安全で有効であるように思われた. 今後長期反復使用に対する効果について研究が必要と思われた.
ISSN:0034-351X