遺伝子診断を契機に遺伝性非ポリポージス性大腸癌であることが判明した1家系
遺伝性非ポリポージス性大腸癌(以下, HNPCC)の診断基準では, 第1度近親者に最低2例以上の大腸癌を有している家系である必要がある. 今回まず発端者にgermline mutationが見つかり, これを契機に第1度近親者の大腸精査を行った結果, 最終的にアムステルダムの基準を満たすHNPCCと診断された家系を経験したので報告する. 〔症例〕症例は52歳男性で, 癌家族歴はあるもののHNPCCの診断基準は満たしていなかった. 他院で30歳時下行結腸癌にて左半結腸切除術, 38歳時上行結腸癌にて右半結腸切除術施行. 以降当院で49歳時直腸多発癌にて腹会陰式直腸切断術を行い大腸全摘となった....
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Published in | 家族性腫瘍 Vol. 1; no. 2; p. 39 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
家族性腫瘍研究会
15.05.2001
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ISSN | 1346-1052 |
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Summary: | 遺伝性非ポリポージス性大腸癌(以下, HNPCC)の診断基準では, 第1度近親者に最低2例以上の大腸癌を有している家系である必要がある. 今回まず発端者にgermline mutationが見つかり, これを契機に第1度近親者の大腸精査を行った結果, 最終的にアムステルダムの基準を満たすHNPCCと診断された家系を経験したので報告する. 〔症例〕症例は52歳男性で, 癌家族歴はあるもののHNPCCの診断基準は満たしていなかった. 他院で30歳時下行結腸癌にて左半結腸切除術, 38歳時上行結腸癌にて右半結腸切除術施行. 以降当院で49歳時直腸多発癌にて腹会陰式直腸切断術を行い大腸全摘となった. 52歳時には左尿管癌の手術を施行した. 本人のinformed consentを得たうえで, 直腸多発癌と尿管癌のRERを調べた結果はいずれもMSI-Hであった. そこでミスマッチ修復遺伝子を検索したところ, hMLH1のexon19にgermline mutationを認め, また進行直腸癌にsomatic mutation, 尿管癌にLOHを伴っていた. この結果に基づき第1度近親者の大腸精査を勧めたところ, 43歳妹の上行結腸癌, 直腸癌, 乳癌, 25歳長男の直腸癌が指摘され, 最終的にアムステルダムの基準を満たす家系であることが判明した. 〔考察〕本症例のように当初は診断基準を満たさなくても, RERを含めた遺伝子診断により, 早期のHNPCC家系診断が可能である. |
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ISSN: | 1346-1052 |