各種疾患のレクチン凝集反応について

[目的] 個体の感染症や造血細胞の癌化などに伴い赤血球膜が変化し, 潜在していた膜抗原が露出されて正常ヒト血清との凝集反応が認められる. このため血液型判定や交差試験結果判定時に混乱を生じやすい. 当部で最近経験した各種疾患の赤血球とピーナツレクチン(PNA)や大豆レクチン(SBA)との凝集反応を報告する. [方法] 1994年4月から10月までの第2内科(血液内科)267例, 小児科116例およびその他の科852例の血球浮遊液を作成し, PNAとSBAとの反応性をみた. 凝集を示した例についてはその後の経時的変化も観察した. [結果] 第2内科および小児科症例では血液疾患233例中37例(1...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 1007
Main Authors 中満三容子, 吉木景子, 福吉葉子, 西村要子, 山口一成, 高月清, 長倉祥一, 中熊秀喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1994
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ISSN0546-1448

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Summary:[目的] 個体の感染症や造血細胞の癌化などに伴い赤血球膜が変化し, 潜在していた膜抗原が露出されて正常ヒト血清との凝集反応が認められる. このため血液型判定や交差試験結果判定時に混乱を生じやすい. 当部で最近経験した各種疾患の赤血球とピーナツレクチン(PNA)や大豆レクチン(SBA)との凝集反応を報告する. [方法] 1994年4月から10月までの第2内科(血液内科)267例, 小児科116例およびその他の科852例の血球浮遊液を作成し, PNAとSBAとの反応性をみた. 凝集を示した例についてはその後の経時的変化も観察した. [結果] 第2内科および小児科症例では血液疾患233例中37例(15.9%), その他の疾患150例中8例(5.3%)であった. 陽性例の経時的観察では, ほとんどの例が1週間か2週間程度で反応が消失し一過性であったが, 発作性夜間血色素尿症(PNH)とリンパ腫(IBL)の2例では7ヵ月以上陽性を示した. この2例の抗原のみは他のレクチンやポリブレインとの反応性からThと同定された. PNH症例ではTh化をひきがねに溶血発作がみられた. なお, その他の科852例の検体中3例(0.4%)がレクチン反応陽性を示した. [結論] レクチン反応陽性例は血液疾患に多くみられた. 必ずしも汎凝集の定義を満たさないが, 赤血球膜の二次的変化の良いマーカーと考えられた. ウイルスや細菌による感染およびや細胞の癌化に伴う二次性赤血球膜変化をとらえやすく, 疾患の診断, 臨床経過観察に有用と考えられる.
ISSN:0546-1448