片肺換気時における塩酸オルプリノンの肺循環に及ぼす影響

〔目的〕PDE III阻害薬であるオルプリノンは血管拡張作用による前負荷の軽減と心収縮力増強作用を有し, 心不全の治療に用いられる. その際, 肺血管も拡張させるため, 肺内シャントを増し, 酸素化の障害が予想される. 今回我々は犬の片肺換気モデルを用いてオルプリノンの肺循環および酸素化への影響について検討した. 〔方法〕雄雑種成犬(8~9kg)6頭を用いた. ペントバルビタールで麻酔後, 挿管し大腿動脈より動脈圧測定カニューレを, また, 大腿静脈もしくは内頚静脈より肺動脈カテーテルを挿入した. 麻酔維持はペントバルビタールおよびフェンタニルで行った. 気管切開後, 分離肺換気用ダブルルーメ...

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Published in蘇生 Vol. 19; no. 3; p. 247
Main Authors 片山貴晶, 島田二郎, 川前金幸, 大槻学, 村川雅洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.10.2000
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ISSN0288-4348

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Summary:〔目的〕PDE III阻害薬であるオルプリノンは血管拡張作用による前負荷の軽減と心収縮力増強作用を有し, 心不全の治療に用いられる. その際, 肺血管も拡張させるため, 肺内シャントを増し, 酸素化の障害が予想される. 今回我々は犬の片肺換気モデルを用いてオルプリノンの肺循環および酸素化への影響について検討した. 〔方法〕雄雑種成犬(8~9kg)6頭を用いた. ペントバルビタールで麻酔後, 挿管し大腿動脈より動脈圧測定カニューレを, また, 大腿静脈もしくは内頚静脈より肺動脈カテーテルを挿入した. 麻酔維持はペントバルビタールおよびフェンタニルで行った. 気管切開後, 分離肺換気用ダブルルーメンチューブを挿入し, 気管支ファイバーにて位置を確認した. 次に, 両肺換気時(TLV), 片肺換気時(OLV)それぞれにオルプリノン50μ・kg^-1 ボーラス投与後1.0μ・kg^-1 ・min.^-1 で1時間持続投与した. 投与開始前, 30分後, 1時間後に血行動態を測定し, 血液(動脈, 混合静脈血)ガス分析を行い, シャント率を求めた. 〔結果〕心拍数, 平均動脈圧はオルプリノン投与前に比べ, TLV, OLVのいずれも有意な変化はみられなかった. 平均肺動脈圧はTLVでのみ有意に減少した. 心拍出量(CO)はTLVでのみ有意に増加した. 体血管抵抗はいずれでも有意に減少した. 肺血管抵抗(PVR)はTLVでは有意に減少したが, OLVでは有意に増加した. PaO2はTLVでのみ有意に低下した. シャント率はTLVでのみ有意に増加した. 〔考察〕オルプリノンの投与によってTLVとOLVで異なった血行動態を示した. TLVでPVRを減少させ, COおよびシャント率を増加させる投与量ではOLVでPVRを増加させた. OLVのように低酸素性肺血管収縮を起こしている肺血管に対し, オルプリノンは拡張作用を示さないことが示唆された. 〔まとめ〕TLVでCOを増加させ, PVRを低下させる量のオルプリノンはOLVでの肺循環に対する影誓は少ない. OLVでの効果について投与量増して検討する必要がある.
ISSN:0288-4348