胸腔鏡で診断し得た肺吸虫症の1例

症例は41歳, 男性. 健康診断で左胸水を指摘された. 自覚症状はなく, 胸部CTで左に中等度の胸水貯留を認めたが, 肺内に異常所見は認めなかった. サワガニ, イノシシなどの生食歴は明らかにできなかったが, 血清・胸水とも好酸球増加を認め, 肺吸虫症を疑い, 胸腔鏡検査を施行した. 左横隔膜直上の胸壁に隆起を認め, 中央部より赤褐色の分泌物が排出していた. 寄生虫による肉芽腫形成と考え同部位を胸腔鏡下に切除した. 摘出標本では虫体は確認できなかったが, 好酸球浸潤の著明な肉芽組織を認め, 肺吸虫の胸腔内への侵入経路ではないかと推察した. また, 血清・胸水中の肺吸虫抗体価上昇より肺吸虫症と診...

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Published in気管支学 Vol. 22; no. 7; p. 572
Main Authors 平井文彦, 加藤雅人, 新田智之, 豊田秀一, 中川真宗, 黒木英男, 山本貴文, 大城戸政行, 島田和生, 一宮仁, 中垣充, 鶴田伸子, 樋口和之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 25.11.2000
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ISSN0287-2137

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Summary:症例は41歳, 男性. 健康診断で左胸水を指摘された. 自覚症状はなく, 胸部CTで左に中等度の胸水貯留を認めたが, 肺内に異常所見は認めなかった. サワガニ, イノシシなどの生食歴は明らかにできなかったが, 血清・胸水とも好酸球増加を認め, 肺吸虫症を疑い, 胸腔鏡検査を施行した. 左横隔膜直上の胸壁に隆起を認め, 中央部より赤褐色の分泌物が排出していた. 寄生虫による肉芽腫形成と考え同部位を胸腔鏡下に切除した. 摘出標本では虫体は確認できなかったが, 好酸球浸潤の著明な肉芽組織を認め, 肺吸虫の胸腔内への侵入経路ではないかと推察した. また, 血清・胸水中の肺吸虫抗体価上昇より肺吸虫症と診断し, プラジカンテルの内服治療を行った. 術後は胸水の再貯留や好酸球増多はなく, 経過良好である. 肺吸虫症が肺内の結節として発見される例は多いが, 胸壁腫瘤として認められた例は稀である. 肺吸虫症の診断と治療において胸腔鏡が有用であったと思われる症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0287-2137