長時間の心停止より回復した小児溺水症例
長時間の心停止より高度の後遺症を残すことなく回復した小児溺水の1症例を報告する. 症例は2歳, 女児. 1987年6月18日, 用水路に浮かんでいる所を発見され, 心停止, 呼吸停止, 瞳孔散大状態で近医に搬入された. ただちに心肺蘇生を開始し, 救急車にて蘇生を続行しつつ1次救急病院に搬送した. 病院到着時には心拍動は微弱ながらも再開していた. 麻酔科医によりただちに蘇生術が続行され, 自発呼吸, 対光反射が出現した. 完全心停止時間は8~18分, 心肺蘇生に要した時間は約20分と推定された. 発見より約2時間後に高気圧酸素治療(OHP)目的で1次救急病院より岡大ICUに転送された. 入室時...
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Published in | 蘇生 Vol. 7; p. 63 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.04.1989
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Summary: | 長時間の心停止より高度の後遺症を残すことなく回復した小児溺水の1症例を報告する. 症例は2歳, 女児. 1987年6月18日, 用水路に浮かんでいる所を発見され, 心停止, 呼吸停止, 瞳孔散大状態で近医に搬入された. ただちに心肺蘇生を開始し, 救急車にて蘇生を続行しつつ1次救急病院に搬送した. 病院到着時には心拍動は微弱ながらも再開していた. 麻酔科医によりただちに蘇生術が続行され, 自発呼吸, 対光反射が出現した. 完全心停止時間は8~18分, 心肺蘇生に要した時間は約20分と推定された. 発見より約2時間後に高気圧酸素治療(OHP)目的で1次救急病院より岡大ICUに転送された. 入室時は昏睡状態で, 脳波は1.5~3.0CPSのびまん性高振幅δ波有意の除波であった. ただちにCa^++ 拮抗薬, ヘパリン・ウロキナーゼ療法, ジアゼパム療法, ステロイド剤, 浸透圧剤, などの脳指向型集中治療を開始するとともにOHPを開始した. 加圧は2時間, 2.8気圧とし, ジャクソン・リース回路で用手人工呼吸を行った. OHP中に肺水腫が出現したが, 減圧に伴い消退した. OHP後δ波が減少し, 4~5CPSのθ波の増加を認めた. 第2回OHP中, 再度肺水腫が出現した. 第2回OHP終了後, 脳波は著明に改善しα波が出現した. OHP中に肺水腫が出現するため, 以後一時OHPを中断した. ICU入室8日目よりOHPを再開し, ICU入室3日目には呼名に対して開眼し, 中枢神経症状もその後日毎に改善傾向を示したため, 以後1回/日のOHPを連日施行し, 合計82回のOHPを行った. 経過中に痙性四肢麻痺を呈してきたため, 機能回復と残存機能の再構築の目的でICU入室16日目より四肢麻痺に対するリハビリをICUにて開始した. 123日目に抜管, 140日目に一般病棟へ転室し, 152日目に退院となった. 現在患児は軽度の歩行障害(Hypotonic paralysis)と嗄声を残すものの, 意志疎通は完全に可能であり, なお外来通院にてリハビリ中である. |
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ISSN: | 0288-4348 |