虚血中軽度低体温による海馬遅発性神経細胞死の抑制とその分子機構の解析
一過性脳虚血後の海馬錐体細胞の遅発性神経細胞死は, アポトーシス性細胞死が主体であり, bcl-2の減少とIL-1β変換酵素(ICE)プロテアーゼの発現が決定的役割を果たすこと, 更にこれらのアポトーシス関連遺伝子群の変化には虚血後早期に海馬錐体細胞に発現誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase:iNOS)が関与している可能性を既に報告した. 今回, 一過性脳虚血中の軽度低体温(34℃)による遅発性神経細胞死の抑制と, そこに関わる上記遺伝子群発現の変化に関し検討したので報告する. 〔対象と方法〕60~70gの雄性スナネズミを対象とした...
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Published in | 蘇生 Vol. 16; no. 3; p. 180 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.09.1997
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 一過性脳虚血後の海馬錐体細胞の遅発性神経細胞死は, アポトーシス性細胞死が主体であり, bcl-2の減少とIL-1β変換酵素(ICE)プロテアーゼの発現が決定的役割を果たすこと, 更にこれらのアポトーシス関連遺伝子群の変化には虚血後早期に海馬錐体細胞に発現誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase:iNOS)が関与している可能性を既に報告した. 今回, 一過性脳虚血中の軽度低体温(34℃)による遅発性神経細胞死の抑制と, そこに関わる上記遺伝子群発現の変化に関し検討したので報告する. 〔対象と方法〕60~70gの雄性スナネズミを対象とした. イソフルラン麻酔下に, 総頸動脈露出後, 麻酔を中止, 両側総頸動脈を遮断し, 5分後に解除・覚醒させた. 実験群は, 虚血中の鼓膜温, 直腸温を37.0±0.2℃に維持した37℃群と, 34.0±0.2℃に維持した34℃群, 虚血操作がなく37.0±0.2℃に維持した偽手術群に分類した. 34℃群に関しては虚血解除後, 速やかに37.0℃に復温した. 虚血再灌流6, 12, 24, 48, 72, 96, 120時間後, 両側海馬CA1領域において, 正常錐体細胞数, 核酸3-OH末端のin situ end-labeling(TUNEL法)によるDNA断片化の検出, 並びにbcl-2, p53, ICE, iNOS遺伝子に対する蛋白およびメッセージレベルでの検討を行なった. 〔結果〕34℃群において, 虚血再灌流96時間後, 正常錐体細胞数は, 37℃群と比較し有意に温存された(217±43/mm, 19±4/mm, P<0.01). 更にTUNEL法では核の標識は抑制され, 免疫組織学的にbcl-2は海馬CA1領域において減少せず, iNOSの誘導も認められなかった. 〔結論〕虚血中の軽度低体温により, 海馬CA1領域の錐体細胞におけるアポトーシスは著明に抑制され, それに関わる遺伝子群の変化も認めなかった. 虚血中の低体温は, カルシウムの流入とそれに引き続くアポトーシス関連早期遺伝子の誘導に関わる転写因子群の活性化を抑制することが推測された. |
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ISSN: | 0288-4348 |