名古屋大学における輸血医学の現状

我が国の医学教育では, 広義の治療分野が占める割合は小さく主に疾病の病態生理, 診断が中心となっていること, さらには輸血部門における教官がほとんどの大学病院では一人であり, 私立医科大学の中には輸血部の設置されていないところもあること, 更に卒後教育は一部の大学を除いて十分に行われていない. また検査技術学科生は血清学の1分野として行われているが, 看護学科生, 薬学生, さらには歯科学生に対する輸血教育を行っている大学はほとんどない. 輸血療法はある意味ではかなりの専門的な知識が要求される分野にも関わらず, 医師であれば誰でも, どこでも輸血が行うことが出来ること, 未だ輸血認定医(専門医...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 227
Main Author 高松純樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.2003
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ISSN0546-1448

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Summary:我が国の医学教育では, 広義の治療分野が占める割合は小さく主に疾病の病態生理, 診断が中心となっていること, さらには輸血部門における教官がほとんどの大学病院では一人であり, 私立医科大学の中には輸血部の設置されていないところもあること, 更に卒後教育は一部の大学を除いて十分に行われていない. また検査技術学科生は血清学の1分野として行われているが, 看護学科生, 薬学生, さらには歯科学生に対する輸血教育を行っている大学はほとんどない. 輸血療法はある意味ではかなりの専門的な知識が要求される分野にも関わらず, 医師であれば誰でも, どこでも輸血が行うことが出来ること, 未だ輸血認定医(専門医)が十分でない等制度的, 構造的問題を孕んだままである. 1974年に名古屋大学医学部附属病院に輸血部が設置されて以来, 輸血に関する医学生に対する卒前教育は従来の内科もしくは外科の講義の一部分から独立して輸血部が担当することになった. 一方, 法医学では血液型の講義並びに実習は以前より, 一貫して行われている. 講義時間は外科総論として90分4コマ, 法医学1コマ, 実習は輸血部実習180分, 法医学実習180分及び特定のグループではあるが外科実習の一部でも行われていた. 1997年全学的な講義, 実習の大きな改変とともに, 血液系統講義の90分1コマ, 法医学1コマ, 実習は輸血部実習1日, 法医学実習180分となった. 2003年度からチュートリアル授業の導入により講義は大幅に削減されたが幸い輸血の講義, 実習には従来のままであるが不十分である. 今後の輸血教育は文部科学省の「マネージメント改革」なる提言では輸血部の教官も併任とするなど絶望的で, 個別の大学, あるいは個々の教官の努力では限界があるものの, 輸血の従事する我々としては一層の努力が求められる.
ISSN:0546-1448