頸髄除圧術前・後の脊髄形態の変化と臨床成績の解析

「目的」除圧術前後の脊髄横断面積の変化と術後臨床成績を解析することで, 脊髄の形態学的な柔軟性と術後臨床症状について検討したので報告する. 「対象」手術を施行し術後2年以上経過観察が可能であった頸椎症性脊髄症32例, 頸椎後縦靱帯骨化症14例, 頸椎椎間板ヘルニア10例を対象とした. 「方法」脊髄形態はMRI T1強調画像で最大圧迫部の脊髄を, T2強調画像でくも膜下腔を観察し, 各種パラメーターはビデオ入力によりNIH imageにて算出した. 統計解析には, 術前とfollow up時のJOAスコアを目的変数, 脊髄横断面積, くも膜下腔横断面積, 残余くも膜下腔横断面積を説明変数とし,...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 35; no. 12; pp. 986 - 987
Main Authors 前沢靖久, 馬場久敏, 内田研造, 古沢修章, 小久保安朗, 阿部純久, 久保田力, 井村慎一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1998
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Summary:「目的」除圧術前後の脊髄横断面積の変化と術後臨床成績を解析することで, 脊髄の形態学的な柔軟性と術後臨床症状について検討したので報告する. 「対象」手術を施行し術後2年以上経過観察が可能であった頸椎症性脊髄症32例, 頸椎後縦靱帯骨化症14例, 頸椎椎間板ヘルニア10例を対象とした. 「方法」脊髄形態はMRI T1強調画像で最大圧迫部の脊髄を, T2強調画像でくも膜下腔を観察し, 各種パラメーターはビデオ入力によりNIH imageにて算出した. 統計解析には, 術前とfollow up時のJOAスコアを目的変数, 脊髄横断面積, くも膜下腔横断面積, 残余くも膜下腔横断面積を説明変数とし, 手術時年齢と罹病期間を制御因子とした偏相関分析を行った. 「結果」JOAスコアは, 術前11.7点から術後14.3点と改善し改善率は59.0%であった. 術前後のJOAスコアと各種パラメーターとの相関を見てみると, 術前, 脊髄横断面積も含めたデータは, 術前のみならず長期成績も予見できなかった. しかし, 術前脊髄横断面積40平方ミリメートル以下の中等度以下の症例において, 脊髄横断面積増大率はfollow up時のJOAスコアと相関した. すなわち, たとえ術前に強く脊髄が圧迫されていても術後に脊髄面積が増大する症例においては, 増大率に比例し臨床症状が改善することを示した. 「考察」我々が示した脊髄横断面積40平方ミリメートル以下の症例の除圧後の脊髄横断面積の増大率, すなわち形態学的な柔らかさは, 残された脊髄の可逆的な病理変化と脊髄機能の可塑性を反映するものと考えた. 「結語」脊髄は, 完全に除圧術がなされた場合, その臨床症状の改善には除圧術後の脊髄の増大度が重要な因子と考えられた.
ISSN:0034-351X