不規則抗体が検出されない溶血性副作用をRh因子適合血により改善しえた一症例
数回にわたり溶血性副作用を起したにもかかわらず, 不規則抗体が検出されなかった患者にRh因子適合血の輸血を行い, 副作用を軽減しえたので報告する. 症例M. H;52歳, 女性, 妊娠歴・輸血歴あり. 血液型:A_1 , ccDee, Le(a-b-), P_2 , NNss, Fy(a+b+), Jk(a+b+), Di(a+), Tj(a+), JMH(+). 現病歴:食道静脈瘤, 肝硬変. 1988年5月16日, 食道静脈瘤からの吐血で本院へ緊急入院. 5月16日~18日にかけて生食法適合血10単位(新鮮血)の輸血, 及び止血剤により吐血はおさまった. 輸血10日後にHb尿が出現, 総ビ...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 35; no. 2; p. 266 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.1989
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 数回にわたり溶血性副作用を起したにもかかわらず, 不規則抗体が検出されなかった患者にRh因子適合血の輸血を行い, 副作用を軽減しえたので報告する. 症例M. H;52歳, 女性, 妊娠歴・輸血歴あり. 血液型:A_1 , ccDee, Le(a-b-), P_2 , NNss, Fy(a+b+), Jk(a+b+), Di(a+), Tj(a+), JMH(+). 現病歴:食道静脈瘤, 肝硬変. 1988年5月16日, 食道静脈瘤からの吐血で本院へ緊急入院. 5月16日~18日にかけて生食法適合血10単位(新鮮血)の輸血, 及び止血剤により吐血はおさまった. 輸血10日後にHb尿が出現, 総ビリルビン2.6mg/dl(間接ビリルビン1.6mg/dl), RBC313万, Hb9.9g/dlを示した. 直接クームス試験(ジギトニン・酸カイリ液), 血清中の不規則抗体(間接クームス法・ポリブレン法)すべて陰性であった. また, HAM試験陰性, Donath-Landsteiner抗体陰性で, 溶血性副作用の原因となるものが確認できないままクームス法交差適合血の輸血を継続した. しかし, Hb尿が再び出現し, 貧血改善は認められなかった. 患者のRh式血液型がccDeeと稀な血液型であることと低力価のRh抗体の存在も否定できないことから, Rh因子に関して適合血が得やすいccdee型の輸血を行なったところHb尿も消失し, 効果が現われた. 1989年1月の時点において上記の適合血を輸血の際用いているが, 抗赤血球抗体陰性で何ら不都合は認められていない. 本症例は遅延性溶血性輸血副作用と推測され, 従来の方法では不規則抗体は検出できなかった. 低力価抗体の可能性も考えられるため, 今回のような原因不明の副作用に際し, Rh因子適合血を輸血することは実用的な解決法と考えられる. |
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ISSN: | 0546-1448 |