左室壁運動異常を伴った催不整脈性右室異形成と思われる1例
症例は25歳男性で心室頻拍(VT)による失神発作のために入院した. 洞調律での心電図上III,aV_F ,V_3 ~V_5 の陰性T波とイプシロン波を認め, late potentialが陽性であった. 心エコー図, 心プールシンチグラフィ, 核磁気共鳴法, 心室造影検査上, 右室の著しい拡大と壁運動低下, および左室の心尖部を中心とした壁運動異常を認めた. 冠動脈は正常であり, 心筋逸脱酵素やウイルス抗体価の上昇は認めなかった. 電気生理学的検査上, 右室下壁心基部付近でfragmentationを伴う心内膜電位を記録した. 同部位ではペーシングによる心室捕捉が得られず, そのごく近傍でのペ...
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Published in | 心臓 Vol. 28; no. 1; pp. 47 - 52 |
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Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
丸善
15.01.1996
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Summary: | 症例は25歳男性で心室頻拍(VT)による失神発作のために入院した. 洞調律での心電図上III,aV_F ,V_3 ~V_5 の陰性T波とイプシロン波を認め, late potentialが陽性であった. 心エコー図, 心プールシンチグラフィ, 核磁気共鳴法, 心室造影検査上, 右室の著しい拡大と壁運動低下, および左室の心尖部を中心とした壁運動異常を認めた. 冠動脈は正常であり, 心筋逸脱酵素やウイルス抗体価の上昇は認めなかった. 電気生理学的検査上, 右室下壁心基部付近でfragmentationを伴う心内膜電位を記録した. 同部位ではペーシングによる心室捕捉が得られず, そのごく近傍でのペーシング波形が最もVT波形と近似した. 薬効評価を行う目的でVT誘発試験を試みたが, VTは誘発されなかった. 心筋生検では左室右室ともに心筋細胞の肥大と間質の置換性線維化を認めた. 右室ではこれらの所見がより顕著であり, 間質の脂肪浸潤も認められた. 催不整脈性右室異形成(arrhythmogenic right ventricular dysplasia:ARVD)の病変は通常右心室に限局するのが特徴であるが, 左室病変や左室機能異常を伴うことも少なくないことが知られており, 本症例もそれに相当するものと考えた. 本症例は厳密にはARVDと確定診断しえない問題点を残すが, ARVDの病態をとらえるための一助となる貴重な症例であると考え報告する. |
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ISSN: | 0586-4488 |