MPHA法における非特異反応について
「目的」MPHA法は少しずつ改良されてきて, かなり高感度な方法となっている. それに伴って非特異反応(偽陽性)の出現率も高くなっていると思われる. 今回, MPHA法での非特異反応の原因とその対策について検討したので報告する. 「方法」MPHAマニュアル改訂第4版の2に準じて実施した. 検体には輸血歴のない健康人男性の血液を用いた. 「結果」1)汚染水による非特異反応:血清感作の時に用いるヘペス溶液作製に当施設の脱イオン水を使用したところ非特異反応が生じた. ヘペス溶液は無菌的生食水を用いて作製する必要があった. 2)血小板の固相化が不完全なために生じる非特異反応:血小板がプレートU底を完全...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 2; p. 483 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.1993
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 「目的」MPHA法は少しずつ改良されてきて, かなり高感度な方法となっている. それに伴って非特異反応(偽陽性)の出現率も高くなっていると思われる. 今回, MPHA法での非特異反応の原因とその対策について検討したので報告する. 「方法」MPHAマニュアル改訂第4版の2に準じて実施した. 検体には輸血歴のない健康人男性の血液を用いた. 「結果」1)汚染水による非特異反応:血清感作の時に用いるヘペス溶液作製に当施設の脱イオン水を使用したところ非特異反応が生じた. ヘペス溶液は無菌的生食水を用いて作製する必要があった. 2)血小板の固相化が不完全なために生じる非特異反応:血小板がプレートU底を完全に覆っていないと, 血清が直接プレートに付着し非特異反応を起こす. 改訂第4版の2以降は血小板浮遊液を50μl分注することにより血小板モノレイヤーが均一になり, この種の非特異反応は激減した. 3)血漿検体による非特異反応:MPHA法においては被検検体は血清であることが必要である. 血漿だと固定ヒッジ血球を巻き込んでしまうためである. 血漿の場合は血清化することが必要である. この操作により陰性化する. 4)ホルマリン固定による非特異反応:血小板をホルマリン固定すると血小板膜上に変性抗原(Crypt Antigen)が出現する. この抗原に対して献血者の約0.1%の人が抗体を保有している. この反応は固定剤を必要としない司溶性血小板抗原を用いるMPHA法では全く検出されない, また, グルタール固定では, この非特異反応は現出しないので鑑別司能である. 5)血小板膜変化による非特異反応:輸血歴のない健康人男性の血清を用いても, 特にクロロヰ・ン処理血小板に強く反応する血清群があることが判明した. この反応は, 付着された血小板のロットによってかなりの差異を生じる. このことから原因は血小板分離過程による膜の変化(活性化を含む)と推定される. EDTA採血及びEDTA溶液による血小板の洗浄による血小板分離で, この非特異反応を減弱することが可能である. 「考察」血小板は生き物であり, 分離し固相する過程で最適な条件で処理しないと様々な非特異反応が現出することが, MPHA法の改良による感度上昇とともに判明した. 特に5)の膜変化については個人個人の血小板について変化の程度が異なるので, 多数例にて最適な条件を検討する必要を感じた. |
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ISSN: | 0546-1448 |