片麻痺患者に発生した大腿骨頸部骨折の予後

当科において治療した片麻痺患者に発生した大腿骨頸部骨折の術後1年での予後について検討したので報告する. 【対象と方法】症例は20例で男性4例, 女性16例で, 年齢は43~86(平均70.3)歳であった. 麻痺側は左12例, 右8例で, 麻痺側と骨折側が同じであった者は14例(70%)であった. 骨折型は外側型9例, 内側型11例であった. 受傷時の麻痺の程度はBrunnstrom分類で, stage II:3例, stage III:4例, stage IV:5例, stage V:3例, stage VI:5例であった. 麻痺発症から骨折までの期間は平均2年6カ月であり, 2年以内の例が1...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 30; no. 11; p. 889
Main Authors 嘉森雅俊, 荻野武彦, 森裕祐, 廣瀬和義, 加田顕秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.11.1993
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ISSN0034-351X

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Summary:当科において治療した片麻痺患者に発生した大腿骨頸部骨折の術後1年での予後について検討したので報告する. 【対象と方法】症例は20例で男性4例, 女性16例で, 年齢は43~86(平均70.3)歳であった. 麻痺側は左12例, 右8例で, 麻痺側と骨折側が同じであった者は14例(70%)であった. 骨折型は外側型9例, 内側型11例であった. 受傷時の麻痺の程度はBrunnstrom分類で, stage II:3例, stage III:4例, stage IV:5例, stage V:3例, stage VI:5例であった. 麻痺発症から骨折までの期間は平均2年6カ月であり, 2年以内の例が15例(75%)であった. 全例に手術を施行したが, 手術法は通常の大腿骨頸部骨折と同様に行った. 後療法はできるだけ早期にベッドサイドより施行し, 骨折部の固定状態, 麻痺の程度にあわせて進めていった. 入院期間は平均3.2カ月であった. 【結果および結論】受傷前の歩行状態は独歩3例, T杖歩行9例, つたい歩き8例であったが, 術後1年での歩行状態はT杖歩行8例, つたい歩き8例, 車椅子(歩行不能)4例であった. 受傷後はT杖歩行を義務づけるようにしたため独歩の例はない. 受傷前の歩行状態が術後成績に大きく影響していた. 麻痺の程度が重度の例で歩行状態が悪化した例が多い傾向にあった. 成績不良例は老人性痴呆症を合併していた例が多かった. 片麻痺は大腿骨頸部骨折の成績不良の絶対的要因とはならず, 後療法を含めて適切な治療を行えば, 受傷前の歩行状態を獲得することは十分可能であると思われる.
ISSN:0034-351X