カルシウム制御蛋白を分子標的とした心不全治療開発

「はじめに」近年, 心不全を悪化させる因子として, 細胞内Ca2+循環異常が注目されている. とりわけCa2+を介する機能調節として重要な細胞内構造は, 細胞膜局在イオンチャネルと筋小胞体(SR)である. 不全心ではこれら機能が低下し, Ca2+循環異常の直接の原因となる. さらにCa2+循環を改善させる分子標的介入は, 心不全進行を阻害することから新しい治療標的としても注目を集めている. たとえば, 心不全を自然発症する心筋症モデル動物を用いた検討では, 実験的遺伝子治療により細胞内Ca2+循環異常を是正すると, 心不全進行が劇的に改善する. Ca2+動態改善による心不全治療効果は遺伝的心筋...

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Published in心臓 Vol. 39; no. 11; pp. 970 - 974
Main Authors 池田安宏, 山田倫生, 松崎益徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.11.2007
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ISSN0586-4488

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Summary:「はじめに」近年, 心不全を悪化させる因子として, 細胞内Ca2+循環異常が注目されている. とりわけCa2+を介する機能調節として重要な細胞内構造は, 細胞膜局在イオンチャネルと筋小胞体(SR)である. 不全心ではこれら機能が低下し, Ca2+循環異常の直接の原因となる. さらにCa2+循環を改善させる分子標的介入は, 心不全進行を阻害することから新しい治療標的としても注目を集めている. たとえば, 心不全を自然発症する心筋症モデル動物を用いた検討では, 実験的遺伝子治療により細胞内Ca2+循環異常を是正すると, 心不全進行が劇的に改善する. Ca2+動態改善による心不全治療効果は遺伝的心筋症だけでなく, 梗塞後心不全や, 圧負荷心不全でも有効であった. これらの実験的事実をふまえ, Ca2+循環異常は心筋細胞骨格の異常とともに心不全病態において予後に直接かかわる最終共通シグナリング経路(final common pathway)であると考えられるようになった1)2). 現状では, 心筋内Ca2+循環調節異常を直接改善させる薬物療法は存在しない.
ISSN:0586-4488