臓器移植を考慮した当ICUにおける小児脳死症例についての検討

一昨年, 臓器移植法案が成立して以後, 現在までに3例の移植が行われたが, 今後更に増加するものと思われる. しかし, 小児臓器移植は, 6歳未満の小児の脳死判定ができないことから海外での臓器移植しか道がなく, 小児臓器移植は依然として大きな問題となっている. そこで, 今回我々は, 当ICUにおいて臓器移植を考慮した小児脳死症例の検討を行ったので報告する. 〔方法〕1991年から1999年までの8年半の間に, 当ICUにおいて6歳未満で脳死であろうと判断された症例について, その患者背景, 疾患の内訳また, 6歳未満の全死亡者に占める割合, また, それらの患者の臓器移植の適応の可能性等をr...

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 198
Main Authors 田口弥人, 梶田裕加, 寺澤篤, 真野るみ子, 山田富雄, 杉本憲治, 林和敏, 安田邦光, 高須宏江, 石川清
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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Summary:一昨年, 臓器移植法案が成立して以後, 現在までに3例の移植が行われたが, 今後更に増加するものと思われる. しかし, 小児臓器移植は, 6歳未満の小児の脳死判定ができないことから海外での臓器移植しか道がなく, 小児臓器移植は依然として大きな問題となっている. そこで, 今回我々は, 当ICUにおいて臓器移植を考慮した小児脳死症例の検討を行ったので報告する. 〔方法〕1991年から1999年までの8年半の間に, 当ICUにおいて6歳未満で脳死であろうと判断された症例について, その患者背景, 疾患の内訳また, 6歳未満の全死亡者に占める割合, また, それらの患者の臓器移植の適応の可能性等をretrospectiveに調査し検討した. 〔結果〕6歳未満で脳死と判断された症例数は13例で, それらの疾患の内訳は, 溺水3例, 脳炎・髄膜炎4例, ライ症候群2例, 気管支喘息による低酸素脳症1例, 一酸化炭素中毒1例, 被虐待による頭蓋内出血1例, 事故による低酸素性脳症1例であった. 脳死と判断された症例の6歳未満の全死亡者に対する割合は9.4%(13例/139例)であった. また, 臓器移植の可能性があると判断された症例は13例中4例であり, それらが6歳未満の全死亡者に占める割合は2.9%(4例/139例)あった. 〔考察および結語〕厚生省脳死判定基準に6歳未満は除外項目とされており, 今回の我々の症例では神経学的検査, 身体所見, 無呼吸テスト等により臨床的に脳死と判定した. 今回の症例の中には, 脳炎, 髄膜炎, ライ症候群など臓器移植の適応とならない症例も含まれた. 実際に臓器移植の適応と思われたものは非常に少なく4例(2.9%)のみであった. また, 両親の心情的な問題を考えるとその頻度は更に減るものと思われる. 小児の脳死判定の問題も含め, 小児臓器移植の実現は非常に厳しいと考えられる.
ISSN:0288-4348